第三話
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「――ユウはどれにするつもり?」
「そういや決めてなかったな。どうするか……」
俺とシーラは今、装飾の類が一切ない実に初期装備めいた武器たちが粗雑に陳列された、いかにも『穴場』な雰囲気漂う寂びれた武器屋の軒先で、しばらくの間相棒になるであろう得物を選んでいた。
いや、俺とシーラ、というのは間違いだろう。なぜならシーラはここに到着するや否や、何の迷いもなく一振りの片手剣を手に取り、そのままお買い上げしてしまったのだから。
もうちょっと吟味しようぜと突っ込みを入れる暇もなかったが、彼女がこの行動を取れたのにはもちろん理由がある。と言っても実に簡単で、少しうらやましい理由なのだが――
なんでも彼女はベータテスト経験者らしいのだ。十万人の中からたった千人という、俺には通ることができなかった狭き門をくぐった一人。
これは先ほど、シーラがデフォルトでは他人に見えないはずの俺のウインドウから、俺が元々武器屋を物色するために行動していたことを看破し、その理由を『可視モード』なる聞きなれない用語としたことにより発覚したものなのだが、改めてよくよく考えてみると、それ以前からベータテスト経験者の面影はあったように思える。開始直後の他人へのレクチャーや高速のウインドウ捌きなんかがそれだ。
思い返せば思い返すほどそれに全く気付かなかった自分が情けなくなってくるが、ともかく、シーラがベータテスト経験者、すなわち最速スタートダッシュ組だということは、この世界にログインする前から『えんそくのプログラム』のようなものを決めていたはずだ。それは彼女が片手剣を即購入したことが証明している。
ということは、その後の予定も決まっていたりするんだろう。効率の良い狩場に行くだとか安い回復アイテム(この世界ではポーションと言うらしいが)を買いに行くだとか。
そうだとすればぜひくっついて行って講義をお願いしたいところだ。フレンドにもなったことだし、それくらいの権利はあるだろう。
まあそれも、俺が相棒となる武器を決めてからの話だが。
なんと言うか、どれもしっくりこないのだ。他のRPGでも極端に剣を持たなかったせいか、武器を操る自分を想像するとその姿にどうしても違和感を感じてしまう。もういっそのことひのきのぼうでも持ってしまおうか。
とはいえ、俺にも一応こんな戦闘スタイルになりたいという希望はある。
一つは機動力があること。回避が容易にできたり敵との距離を取りやすかったり、ようは『当たらなければどうということはない』というやつだ。それに全身を鎧で固めてしまうのにはかなり抵抗がある。
もう一つはそれなりにダメージを与えられる、攻撃特化仕様であること。やはりせっかくのRPG、しかもVRMMOときているのだから、
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ