詠い霞むは月下にて
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みに染まった死兵部隊と飛将軍は……やばいわよ」
「……こればっかりはウチの欲出せへんわな。恋にはまだ勝たれへんから華琳にもわがままは言えへんわ。悔しいけどな」
悔しそうに眉を寄せる霞さんは心底そう思っているんだろう。天下無双に憧れていたから、それも仕方のない事だ。
これで方針は決まった。
彼を戻し、恋さんとねねちゃんを私達の元へ。全てが上手く行けば、多くの幸せが手に入る。
――そして……彼を確実に閉じ込める檻が出来上がる。
力では、飛将軍という大陸最強の矛によって。
心では、想いを繋ぐ事を本当の意味で分かってあげられる優しい人中と、これから繋ぐであろう幾多モノ同志の絆によって。
『彼女』と鳳凰が逃がそうとしても、飛将軍を従える『覇王の妹』が先に命じておけばいい。黒麒麟は……覇王では無く私の命令に従って貰う。私が立場を得れば抗う事が出来るようになり、聡明な覇王とも利害交渉が許されるからそこだけが一番の難所。
――矛盾はもう、呑み込ませない。あなたは此処にいる事が一番幸せなんです。だからどうか、黒麒麟に戻っても……何処にも行かないで。
心の内で呟き、ふるふると頭を振る。
自分の腹黒さと欲深さに嫌気が差してきた。私は私の望みの為に、人の心を捻じ曲げ、人を利用し尽す。随分と……
――彼に似てきたモノだ
きっと彼もこんな気分だったんだろう。
苦しいし辛い。でも、それでも大切な人達の幸せが欲しい。
――私に幸せになれとあなたの願いを押し付けたなら、あなたにも私の描く幸せを押し付けます。
きゅっと唇を引き結んで、目の前の神速と私の嘗ての片腕を見据えた。昔のように、ほんの少しだけ厳しく気を張って。
「では、霞さん、詠ちゃん。もうあなた達の主ではありませんが……」
すっと目を細め、霞さんは私を見つめた。詠ちゃんも私に目を合わせる。
嘗て、洛陽に赴いた時の、私に臣下の礼を取る前の瞳は力強く射抜いて来た。
いつも隣に居ながらも、厳しく意見を述べてきた軍師の瞳は冷たく、暖かい。
「もう一度、私に協力してください。大切な彼女達を、私達の元に取り戻す為に。そして私の願い、大切な人達の幸せを作り出す為に」
数瞬の間を置いて、ふっと笑った霞さんは綺麗で、爽やかだった。しょうがないわね、と呆れたように笑う詠ちゃんは大人びて見えた。
「ええよ。華雄が望んだんは月を守る事や。ウチは華琳の部下やけど、月が此処にいるならもうなんも問題あらへん。月の願い、今度こそ叶えたる。それがあのバカへの手向けにもなる。んで、ウチにとっては最高の願いなんやから」
「今度こそ、ボクは月の願いの為だけに全力を尽くすわ。たくさん大切を増やして、たくさん幸せを手に入れましょう」
嬉し
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