詠い霞むは月下にて
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ん。二人は連合に参加しようとせんかったとこに居たいんやろな」
分かってる。
恋さんもねねちゃんも、霞さんの事を怨んでなかったら、保護された恩すら投げ捨てて真っ先に曹操軍に降ってるはずだ。
怨んで無ければ仲が良かった友達のところに向かわないはずが無い。何かの事情で縛り付けられてる、なんて事は有り得ない。一人で三万の賊を撃退出来る人が、死を覚悟している呂布隊とねねちゃんが、一人の諸侯の軍如きを無理やりに抜け出せないわけ無いのだから。
劉備軍では情報を集めきれず、あの二人が何処で何をしてるかすら分からなかったけど、たった一つの情報で全てが見えた。
あの二人は私が『死んだ』から、連合に参加した諸侯全てを皆殺しにするつもりだ。
霞さんは彼女達にとって最低の裏切り者。仲の良かった華雄さんのように忠義に殉じず、華雄さんの守りたいって想いを踏み躙って、『董卓を殺した』連合の諸侯に命欲しさに降ったと思ってるから許せないんだ。
そして今は最悪の時期。
袁家の目によって私が生きてることは表に出せない。
バレたら、政治的に力の強い袁家は声を大にして言えるだろう。偽者を代わりに討ち取った袁家だからこそ、それを言ってもただの憤慨として許される。
『悪逆の徒である董卓を挿げ替えて匿っていた黒麒麟、そしてそれを受け入れた曹孟徳は大罪人である。漢の名の元にその頸を討ち取れ』
袁と劉が手を組めばそれを言うは容易い。そこに西涼のあの人が加われば私の生存の事実確認も強固に出来る。
私が悪政を敷いていたのはもう確かな事実として誤認されているから、今度は反曹操連合が組まれることになる。
二度目ともなれば違う諸侯も動くだろう。正義の名の元に私達を悪と断じて切り捨てに来るだろう。桃香さんも、否、朱里ちゃんなら間違いなくこれを機と見て、徐公明の独断の失態を注ぐという理由で軍を動かせるだろう。
そうしてドロドロの乱世が渦を巻いて濃くなっていく。私達の次は劉備軍、劉表軍、孫策軍、西涼連合によっての袁家討伐。一つ一つ潰されていく事になるが、駆け引きや貶めあいでどれだけ乱世が延びるか分かったモノでは無い。
逃げ場は無い。それだけ『彼と彼女』は……この大陸で大きな存在になってしまった。名声は利となっていても、たった一つで裏返れば害悪にしかならない。大きくなり過ぎればなり過ぎる程に。
そして恋さんとねねちゃんは、私が生きてる事実を受け止められない。
華雄さんを殺した彼の傍に、私と詠ちゃんと霞さんが居られるはずが無いと思い込んでしまうから。
普通に考えれば、誰が友達を殺した者の側に居続けられるのか。私の憎しみに対する考え方が変で、彼も異質だったからこうやって一緒に居れるだけなのだ。
誰しもが憎しみを呑み込めるわけでは無い。霞さんだっ
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