詠い霞むは月下にて
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。私達三人を傷つけてしまう事への後悔から。
「ならお礼はお預けか……しっかし、詠がそんな顔するやなんて、徐晃と随分親しくなったみたいやなぁ」
にやにやと悪戯っぽくにやける霞さんを見て、ほんの少し彼を思って沈んでいた心が軽くなった。
――ああ、いつもの霞さんだ。私達が知ってる、自由で、縛られずにいろんなことを楽しめる人のままだ。
「ちょっ……違う! そんなんじゃない! ボクは別にあいつのことなんか――」
「ウチは親しくなったとしか言うてへんけど?」
「っ! 後で覚えてなさいよ?」
恨めしげに見つめる詠ちゃんを飄々と流す霞さん。緩い雰囲気が流れ出す。洛陽でまだ、私達の為に全てを賭けていた頃のように。
この空気を変えてしまうのはちょっと勿体無いけど、聞いておきたいことがある。
「霞さん。あなたは彼の事を憎みますか? 責めますか?」
静寂。
しんと静まり返った室内の空気は痛い。詠ちゃんの顔は昏く落ち込んだ。嘗て詠ちゃんは彼に対して怨嗟を向けた、それが理由だろう。
何故、とは霞さんは聞かない。聡い彼女は私の聞きたい事を分かってくれてる。
「憎まへん。いや……憎めへんわ。ウチらがやっとるのは戦や。殺し合いや。友達を殺されることもある。武人になるっちゅうんはそういうもんや。確かに負けるまでは殺してやろうって考えとったけどな、ウチらだってあいつの友達を殺そうとしてたんやからお相子やろ。何よりいつまでも引き摺るんなんてウチとちゃうし。
あと……記憶を失った事も責めへん。なんで憎んで責めれるんや? あいつは……危険があんのに月と詠を助けてくれるような優しい奴なんやろ? 月と詠にこんだけ認められてる、それが理由でええねん」
草原に風が吹き抜けたような爽やかな笑顔を見せて、彼女は嬉しそうに笑った。
そうだ、霞さんはこういう人だから問題ない。何も問題は無い。だけど……
「では、恋さんやねねちゃんはどうだと思いますか?」
ビシリ、と空気が張り詰めた。
先ほどよりもより一層重たい空気に、詠ちゃんが生唾を飲み込む音が鳴る。
そう……あの優しい人は、私に出会ってしまったから、彼を……
「れ、恋はあかん。ねねもあかん。あの二人は多分……ウチの事も怨んどる。徐晃なんか持っての他や。顔突き合わせ次第殺しかねん」
霞さんの震えは純粋な恐怖。
親しかった友から怨嗟を向けられていると分かっているから。そして飛将軍とその専属軍師の扱う部隊の恐ろしさを知っているから。
「……風から聞いたけど、恋とねねは劉表の所にいるのよね? じゃあ……未だ此処に居ないのがその証明、か」
「せや。恋もねねも、ウチが華琳のとこに居るんは知っとるはずや。やのに劉表んとこに居って一通の文さえこやへ
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