第六章
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第六章
「気が向いたからな」
「だからですか」
「確かにいつもは朝だ」
これは彼のポリシーである。
「朝は神が御機嫌うるわしい。だから朝に行くものだ」
「そういうものですか?」
「ミサは朝に行われるものだな」
「まあ大体はそうですね」
これはミショネも知っていた。
「それだから機嫌がいいのですか」
「そういうことさ。だから神の御機嫌をさらによくさせる為に朝に行く」
どうもあまり科学的根拠がなさそうな考えである。しかしジョバンニ自身はそれで納得しているようであった。
「だからさ。まあけれど今日は」
「特別ですか」
「神父様にもお布施をしておこう」
教会の重要な収入源であるのは言うまでもない。
「ささやかだがな」
「ささやかっていうわりにはいつもかなり寄付されていますね」
「これもイタリア男の伊達というやつだよ」
ここでもまたこれが出た。
「いいかい?ミショネ」
「はい」
「教会には足を運ぶもの。そして寄付は惜しまない」
「それですか」
「これもダンディズムってやつさ。覚えておくんだな」
「そういうものですか」
「そうさ。だから行こう」
もう早速行くつもりになっている。
「教会にね」
「わかりました。それじゃあ」
「うん」
こうして二人は今度は教会に行くことになった。教会はいつも奇麗にしてある。これはこの教会の神父の心掛けの結果である。二人はそれを見つつ教会に入った。礼拝堂に入るとそこには神父はいなかった。
「おられませんね」
「別の場所だろうね、教会の」
ジョバンニはもう勝手がわかっているといった様子でミショネに返した。ステンドガラスの礼拝堂は今は誰もおらずがらんとしたものだった。
「じゃあ。少し探すか」
「神父様は今こちらですか」
「神父様はおられなくても絶対に誰かいるさ」
安心した顔でジョバンニに返した。
「裏の保育園とかにもね」
「ああ、あの保育園ですか」
ミショネは保育園と聞いて納得した顔で頷いた。頷きながら礼拝堂の主を見る。主は何も語らす静かに十字架にいて二人を見守っていた。
「あそこですか」
「あそこなら絶対に誰かいるさ。まあそれでももう子供はいないか」
「とっくに帰っている時間ですね」
「それでも誰かいるのは間違いないさ。じゃあまずはそこに行くか」
「はい。それじゃあ」
「ミショネも寄付はするかい?」
不意にミショネにこのことを尋ねてきた。
「それは。どうするんだい?」
「勿論ですよ」
ミショネの返答はもう決まっていた。
「その為の用意だってもうしていますよ」
「そうか。いい心掛けだ」
「何かこれって伊達とかダンディズムとかそれ以前じゃないですかね」
そしてここで考える顔で述べるのだった。
「寄付は」
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