第六章
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「それ以前か」
「人として当然のことだと思いますけれど」
彼もやはりキリスト教徒であった。少なくともそれを忘れてはいないのだった。
「違いますか?」
「その通り。じゃあ行くか」
「はい」
こうして二人は教会の裏の保育園に向かった。子供達はもう帰っていると思った。しかしそこには。一人の保育士がまだ園に残っている残っている数人の子供達と共に保育園の園庭で遊んでいるのだった。それを見たミショネはジョバンニに顔を向けて言うのだった。
「いましたね」
「もう帰っている時間なんだけれどな」
「何か凄い普通に遊んでいますね」
「イタリアだからか」
ジョバンニは苦笑いを浮かべて自分の国を話に出した。
「だから時間にルーズってわけかな」
「何かそれって諦めてません?」
「諦めちゃいないさ。イタリアはドイツとは違うんだ」
今度はドイツを話に出す。
「あんなに何もかも堅苦しくする必要はないしね」
「確かにそうですね」
これはミショネも同意であった。
「時間厳守ですか」
「そう、あらゆる場合でも」
彼等にとってのドイツのイメージはまさにこれであった。
「厳格で生真面目で」
「それで趣味は哲学を読むことですか」
「何が楽しいんだろうね」
実際はそうではないとわかっていつつもドイツのどんな部分を笑い飛ばす。
「人生は楽しまないと駄目じゃないか。長いんだし」
「そうですよね」
「それを彼等は」
あくまでイタリア男として語る。
「やれ哲学だやれ科学だ」
「そういうのばかりですね、本当に」
「その癖いつもイタリアに多量に来る」
ドイツ人の観光先はかなりの割合でイタリアだ。
「どうしたものかな」
「お金を落としてくれるのはいいですけれどね。さて」
ここでミショネが言った。
「とりあえずあの人に聞いてみますか」
「あの保育士さんか」
「お話を聞ける人はあの人しかいませんよ」
確かに大人は今のところその人しかいない。
「ですからあの人に」
「そうだね。それじゃあ」
「ええ」
こうして二人はまずは保育士さんのところに言って寄付を渡すことにした。ところがその保育士さんを見ると。ジョバンニは思わず声をあげてしまった。
「えっ、貴女は」
「はい!?」
その保育士さんが驚いた顔でジョバンニに応えた。小さな女の子の手を取って優しく遊びの相手をしながら。
「何か」
「昨日の」
「昨日といいますと」
「あっ、いや」
自分が無粋なことをしていると思ってここは引っ込んで。
「何もありません」
「はあ」
「あのですね」
子供達の相手をしているその保育士さんにミショネが言った。
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