四十五話 月の軌跡 前編
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なくそんな風に話しかけながらゆっくりと斎賀に近づいて行く。
「私これから忙しくなってしまうので残っている問題を片付けにきました」
自分に冷笑を浮かべながら近づいてくる永琳に向け、斎賀の方はその場にへたり込み震える声音で喚き始めた。
「わ、わたくしにッ!な、何をするつもりなのです!!議会のしょ、承認も無くわたくしに手をだ、出せば貴方といえど―――――――」
永琳は叫ぶ斎賀に構わず距離を詰めると左手に握っていた注射器の様なものを斎賀の右首筋に突き立て一気に中身を注入する。
そして用は済んだとばかりに斎賀に背を向け入ってきた入り口の歩を進める。そんな永琳に斎賀は首筋を押さえながら震える声音で、
「わ、わたくしに何を――――――」
注射した、と言葉にする前に永琳が振り返り斎賀の台詞を遮る様に口を開く。
「『酸血剤』とでも名付けようかしら?貴方用に造った特製よ」
永琳の能力である『あらゆる薬を作る程度の能力』、それは材料さえあれば自身が望む効能を持つ薬剤を生成出来るという力。
「この薬の効能は二つ。一つは肉体の活性による治癒力の向上、もう一つは時間経過と共に血液を酸性にしていくというものよ。徐々に身体の内側を酸血によって焼かれるけど肉体の治癒力が高まっているから簡単には死なない。……完全に焼け融けるまで苦しみなさい」
言い終えた永琳は再び入り口に向け進もうと斎賀に背を向け、その背中に斎賀は感情のままに言葉を投げかけた。
「わたくしは何も間違った事などしていないじゃないですか!!復讐だか何だかは知りませんがそんな事した所で何の意味も得もないでしょう!!」
ドアを開け部屋を後にしようとしていた永琳は振り返らず斎賀に向け言い放つ。途轍もなく冷たい声音で――――――
「――――――確かに貴方を殺した所でお兄様は帰ってこない……けど――――――それは貴方を生かしておく理由にはならないでしょう?」
“殺して得も無いが生かす価値も無い”結局復讐というものはこの理屈なのかもしれない。
永琳が部屋から姿を消し、暫くすると斎賀は苦悶の表情を浮かべながら部屋中を転げ周り悲鳴を上げ続けた。そして巡回の警備が部屋を確認する頃には衣服と骨だけが部屋に残されたいた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
時は流れ月に移住してから二百年が経過した。
地上の頃とは色々と変化した彼等の生活。
一つは月の住人との邂逅。頭に兎の様な耳を持つ彼等は自らを『玉兎』と名乗った。彼等は移住してきた者達に警戒と共に興味を持ち接触してきたのだ。
蓬莱山 劉禅は彼等が興味を抱いた自分達のが持つ文明を分け与え共有する事を決め
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