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東方虚空伝
四十五話 月の軌跡 前編
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みに守備隊と守護団は現在一つに統合され『月面警備隊』と呼称を変えている。
 一行が一人の警備兵が立つ部屋の前にまで来るとその警備兵は敬礼をした後、壁に備え付けられているコンソールのキーを叩き部屋のロックを解除した。
 ドアがスライドし中から姿を見せる永琳の髪は普段していたゆったりとした三つ編みではなく解かれストレートに落ちている。その表情は一月前の怒りの形相が?のだったかのように穏やかで理性的であった。

「色々御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

 永琳は目の前の一行に対しそう言うと頭を下げる。そして頭を上げると母である鈴音に近づき優しく抱きしめた。

「お母様御免なさい、心配させて」

「……いいのよ〜永琳ちゃんの〜気持ちは〜痛いほど分かるもの〜」

 鈴音も永琳の腰に右手を回し左手で永琳の髪を撫でながらそんな言葉をかける。

「……八意君、大切な者を失い辛いとは思うが我々には君の力、頭脳が必要なのだ」

「はい、分かっております蓬莱山様。さっそく作業に移ります、一月も無駄にしてしまいましたから」

 劉禅の指導者としての発言に永琳も研究者としての言葉を返した。そして一行は永琳を伴い施設を後にする為来た道を引き返して行く。

 ――――――誰も気付かなかった……彼女の穏やかさの違和感に―――――――
 ――――――彼女の中に何よりも純粋な願いと何よりも歪んだ計画が渦巻いている事に――――――




□   ■   □   ■   □   ■   □   ■   □   ■




 永琳が釈放されてから半年程たったある日。
 隔離施設の一室、今現在此処に収容されている唯一の男が部屋の隅でブツブツと小さな声で独り言を呟き続けている。
 男の名は斎賀、元天秤の議会の議員であり月に移住して初の罪人でもある。
 穢れから新帝都を救うと謳い地上で懸命に妖怪と戦っていた守備隊・守護団を穢れた者達と(なじ)り消し去ろうとした張本人である。
 本人は今だ自身の行いは正義であり何故自分が此処に投獄されねばならないのか?と本気で抗議しているのだ。
 今も聞き手など居ないのに延々と自身の行いの正当性を呟き続けていた。
 何時もの様にそうやって時間が過ぎ一日が終わる筈であったが唐突に部屋のドアがスライドし一人の人物が入室して来る。
 斎賀は俯かせていた頭を上げ入室者の顔を確認した瞬間、

「なッ!?なななッ!!何故此処に!!」

 取り乱しそれ以上後退出来ないと理解しているというのに壁に縋り付く様に張り付いた。そのあまりにも無様な格好の斎賀を冷たい瞳で見つめながら入室者の永琳は冷笑を浮かべた。

「お久しぶりですね斎賀議員、あぁ今は元議員でしたね」

 永琳は表情を崩すこと
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