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聖女
第一章
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。君も知っている通りな」
「一週間は無理ですかね」
「そんなところだ。今は」
「五日目です」
「まだ二日時間がある」
 深刻な顔で語る。
「その間家に戻ることはできない」
「だからずっとここに泊まりっぱなしですしね」
 実は今二人はジョバンニの自宅にいないのである。彼の仕事場であるアパートに泊まりっぱなしなのだ。これはジョバンニの夫婦喧嘩の結果である。
「仕方ないですね」
「若い女の子に少し声をかけただけなのだがな」
「奥さんの目の前でですよね」
「ほんの出来心だ」
 随分と反省のない言葉である。
「それであんなに怒るなんてな」
「今年これで何度目でしたっけ」
「三度目だ」
 つまりもう今年で三回もここに逃げてきているのだ。
「この七月の時点でな」
「結構ハイペースじゃないんですか?」
「去年はもっと凄かった筈だぞ」
 やはり反省はあまり見られないジョバンニだった。
「確か十回だったからな」
「去年はまた異常でしたね」
「男は浮気をするものだ」
 こんなことを言えば妻が起こるのも当然であった。
「刺激もまた芸術家には必要だろいうのにあいつときたら」
「まあ愚痴は止めましょう」
 さりげなく彼の言葉を遮った。
「それよりも先生」
「ああ」
「問題は絵ですよ」
 そして仕事に関心を戻させるのであった。
「絵ですけれど。とにかくここにいてもどうしようもないのは確かです」
「そうだ。では外に出るか」
「それでどうされるんですか?」
「ミショネ君」
 何故かここでまた彼に声をかけてきた。
「君はもう飲める歳だったな」
「ええ、まあ」
 イタリアでは少年でも酒を飲むことができる。これはドイツやフランスでも同じだが理由はこの辺りの国々は元々水があまりよくないせいである。

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