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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第二十三話「多色の侵入者」
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「弱点だと?」


 聞き捨てならない一言に眉が寄る。


 とても興味深い話だ。


「そうさ。あんたはその実力の割りに心が甘い。甘ちゃんだ。あんた程の実力ならいつだって俺を仕留めることができた」


 男が右手をあらぬ方向に向ける。


 どこを向けている?


 男の手の先に視線を飛ばし――。


「……なっ」


 思わず目を見開いた。


 そこにいたのは一人の女生徒。騒ぎを聞きつけてやってきたのか、ラフな外着姿で佇んでいた。


 両手を胸の前で合わせて、怯えた顔で小さく震えていた。


 恐怖で身がすくんでいるのか、一向にその場を動こうとしない。


「だからこうなるのさ! 顕現せよ、魔光精霊!」


 男の手に禍々しい光の槍が生まれ、投擲された。


 女生徒は――だめだ、動けそうにない!


 捕食者に睨まれた獲物のように恐怖で塗り固められた表情のまま凍りついていた。


 瞬動で距離をつめつつ、術式を構築する。


 ――断壁よ魔を阻み……だめだ、時間が足りない! ……術式破棄! 耐性強化術式展開……!


 身体の耐久性を向上させる術式を展開して、今にも串刺しにしようとしていた槍と女生徒の間に割り込む。


 急増の術式では構築が甘かったのか、光の槍は俺の腹に突き刺さり、そのまま貫通した。


「あ……」


「リシャルトッ!」


「リシャルトくん……!」


 呆然とした女生徒の声が背後から。


 鋭いエリスの声が左手側から。


 そして、俺の家に居るはずのフィアの声が右手側から聞こえた。


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