第二十三話「多色の侵入者」
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間髪いれずに放たれた腹部への蹴り。咄嗟に後方へ跳び衝撃を受け流しつつ、左手で足首を掴み思いっきり捻った。
「なにっ!?」
体勢からして靭帯切断は免れない。しかし、驚くことに男は捻られた方向へ自身も跳びつつ、自由になったもう片方の足で回し蹴りを放ってきた。
上体を反らして脚撃をやり過ごしそのまま距離を置く。
「へえ……あれを避けるか。やるじゃねぇか、さすがは謎の精霊使い」
「……貴様、なにを知っている」
厳しい目で男を睥睨する。
【謎の精霊使い】の名は三年前の精霊剣舞祭で準優勝した俺を差す。
精霊魔装を使わず精霊魔術――厳密にはただの魔術だが――と体術だけを用いて対戦相手を地に沈めてきた。
その契約している精霊のことから素性の一切が不明の精霊使い。故に【謎の精霊使い】などと呼ばれている。
まあ、それが俺だというのはグレイワースの婆さんとオルデシア王国第二王女のフィアだけだが。
しかし、知るよしも無い情報を知っているこいつは一体……。
俺の問いかけに男は唇の端を吊り上げることで応えた。
鋭い踏み込み。
たったの四歩で間合いを殺してきた男。俺は男の動きに合わせるようにエストを振るい――。
「顕現せよ、剣精霊!」
「ぬっ!?」
闇に瞬く火花。
男の手に出現した大振りの剣が、横薙ぎに振るったエストを弾き返した。
返す刀で袈裟懸けに振り下ろされる。
その殺った、とでも言いたげな得意げな顔が無性に腹立たしい。
「舐めるな……っ」
俺の獲物はエストだけではない。この体そのものが凶器なのだ。
突き上げた右膝が柄頭を叩いた。相手が中途半端な姿勢で振り上げたからこそできた芸当だ。
そのまま膝を内側にねじりこみ、変則の突き蹴りへ。
直線を進む足刀は男の額へ直撃した。
「ぐぁっ」
体重が乗らなかったためか威力は小さい。衝撃が分散し、男を吹き飛ばす結果で終わった。
額から小さく血を流した男はギラギラした目を向ける。
「くっくっくっ、やっぱ一筋縄じゃいかねぇか。いいねぇ、ゾクゾクするぜ……! さあ、もっと殺し合おうぜ、リシャルト・ファルファー!」
右手に剣精霊を携えながら踏み込んでくる。
激しい剣撃を繰り出しながら、もう片方の手を俺に向けた。
「顕現せよ、風精霊!」
圧縮された風の塊が放たれる。
――凍結解放、<対魔障壁>展開!
脳内からリストアップした該当術式を発動させる。対魔術障壁は風
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