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僕の生まれた理由
僕の生まれた理由
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「凄い力?」
 そんなものが僕達にあるのだろうか。そう言われると首を捻ってしまう。
「魔力とかね。それで昔は色々と悪く言われたものよ」
「何かそれって嫌ですね」
「まああたしは実際にそうした力を持っているけれど。言われても仕方ないわね」
「けどそれでも」
「人間ってのはね、身体は大きくても心は小さいものなのよ」
「僕達よりもですか?」
「人によるわね、それは」
 ケムンパスさんはそう言った。
「旦那様にしろこの家の人達は心も大きいけれど」
「悪いことさえしなければ怒られないでしょ?」
「はい」
 タマさんも言った。僕はそれにも頷いた。
「けれど人間には悪い奴もいるから。私も虐められたことがあるわ」
「駅にいた時ですね」
「そうよ。その時は嫌だったわ。水をかけられたり石を投げられたり」
「ひどいですね」
 聞いていると胸が痛くなって締め付けられそうだ。そしてとても悲しい気持ちになってしまう。まるで僕がそうされているみたいに。
「そう思うでしょ。人間にはそんなことをする奴もいるのよ」
「あんたは特にそうしたことは知ってる筈よ」
「またそう言いますけれど」 
 ケムンパスさんの言葉も何度も聞いている。やはりそれでもわからない。
「僕は何も」
「それも明日になればわかるよ」
 けれどここで一言そう言った。
「明日ですか」
「その時ね。覚悟はしておいた方がいいよ」
「覚悟」
 僕はそれを聞いて喉をゴクリ、と鳴らした。
「何を見ても驚かないね」
「はい」
 何だか言われるままに頷いてしまった。
「泣いたりはしないね」
「はい」
 また頷いた。まるでおもちゃみたいに。
「じゃあいいよ。明日だよ」
「ええ」
「あんたがね、ここにいる理由がわかるから」
「理由が」
「そうさ。今まで何かと思うところはあっただろう?」
「はい」
 本当にこれで何度目だろうか。また頷いた。
「それがわかるんだ。けれどそれで後悔はしちゃ駄目だよ」
「何か凄いことみたいですね」
「だからわざわざ言ってるんだよ」
 ケムンパスさんの言葉は何時になく重みがあった。まるで僕の一生を決めるように。
「わかったね」
「わかりました。それじゃあ」
「絶対に来いとはそれでも言わないからね」
 本当に僕にとって決していいことじゃないのはわかる。けれどそれでも行かなくちゃいけないのはわかっていた。僕はその日は次の日に備えて寝た。そして遂にこの日になった。その日はお休みだったのだろうかおうちの人達は皆いた。朝御飯が終わるとお嬢様は自分の部屋に入った。
「行くよ」
「はい」
 僕はケムンパスさんについて行った。そし
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