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僕の生まれた理由
僕の生まれた理由
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・・・ってもうどっか行ったか」
「ルイさんが捕まったの見まして」
「やれやれだな」
 ルイさんはそのまま奥様のところに連れて行かれた。御主人様は僕達を捕まえてその時の憮然とした顔を奥様に見せるのが好きなのだ。困ったことと言えば困ったことだ。
 けれど何か持たれていると悪い気がしない一面もあった。ほっとするのだ。それだけ大事にされているということなのかな、とも思う。どちらにしろ御主人様も僕達を虐めたりするような人じゃない。
「奥様もいつも可愛いって言ってくれるでしょ」
「はい」
 それから暫く経った時のことである。僕が奥様の側に行くとタマさんがいた。そして僕にこう語りかけてきてくれた。
「怒った時は恐いけれど」
「それが旦那様とは違いますね」
「旦那様怒らないからね」
「あれ何でなんでしょ」
「あたし達に嫌われるからと思ってるからよ」
「あっ」
 ケムンパスさんだった。ゆっくりとした動作でこちらにやって来る。
「旦那様はね、猫が大好きなのよ」
「もう嫌という程わかります」
「だからね、怒らないの」
「はあ」
「怒ったら嫌われるでしょ。だから怒らないのよ」
「それでいつも奥様や御主人様に怒られているんですね」
「そういうことね。これも何回か言ったわね」
「ええ」
「あたしがこの家に来た時からそうだったからね。もう何年になるかしら」
「ケムンパスさんってそんなに古いんですか」
「そうね。あんたが来た時みたいな子猫の時に来て」
「そんな時に」
「ペットショップでね、買われたのよ。何でも一目で気に入ったって」
「それでここに」
「それからずっとこの家にいるけれど。旦那様に怒られた記憶はないわね」
「僕もそうです」
「ずっと可愛がってもらえてるでしょ」
「はい」
「あんたはそうされる資格もあるしね」
「何かケムンパスさん僕によくそう言いますよね」
「そうね」
 ケムンパスさんもそれを認めた。
「何でなんですか?」
「明日わかるわよ」
「明日!?」
「お嬢様の部屋にパソコンがあるわよね」
「パソコン?」
「絵が出る箱よ。机と一緒になってるでしょ」
「ああ、あれですね」
 そう言われてはじめてわかった。お嬢様が時間があるといつもいじっているあの箱だ。時々御主人様も使っている。何に使っているのかはわからない。
「お嬢様が使うから、明日」
「それもわかるんですね」
「あたしにはね。明日のこともわかるのよ」
「凄いですね、本当に」
「どうしてそんな力があるのかはわからないけれど。これはあたしが猫だからかもね」
「猫だから」
「猫はね、よく人間に凄い力があるって言われるのよ」

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