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第四十三話 相互意識干渉
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の失態だ』
見え見えの時間稼ぎを承知して、襲撃者は敢えて会話にのってきた。しかしその内容は断片的で一夏がその意味を理解することはできない。
『我々の目的の一つは白式を奪うこと。その新型はついでだな。そして、私の目的は……貴様を殺すことだ』
しかしそのまま会話を引き延ばそうとする間もなく、突如として襲撃者の雰囲気が一変する。もとより、敵意が剥き出しではあったが明らかな殺意がわき上がったのだ。
『私は……エム。我が身の呪縛、貴様ら姉弟の血で振り払ってくれよう。この、サイレント・ゼフィルスで!』
エムと名乗った女の言うことは、相変わらず一夏にはよくわからなかったが彼女の殺意の対象に彼の姉、千冬が含まれていることだけは感じ取れた。
このまま自分が倒れることになれば、箒たちも危険に晒される。そればかりか、千冬まで……。
一夏は目の前の機体、サイレント・ゼフィルスを見ながらかつて戦った、似た特徴をもつ相手を思い出していた。言うまでもなくセシリア・オルコットとブルー・ティアーズである。そして同時にその時の自分の言葉を思い出していた。
(俺は、あのときなんて言った? 千冬姉を守る……? 今手の中にいる箒も守れず、俺達を守ってくれた西園寺さんまで……くそっ。何をやってるんだ、俺は! 力が……みんなを守れる力が欲しい!)
その瞬間、彼の中で何かが脈動する。彼の願いに応えるように、力が少しずつ湧き上がってくるような気さえした。
だが、それを待つほど敵は優しくはない。
『……何をする気か知らんが、死ね!』
周囲の物体……ビットから放たれる光。
何かを掴みかけたとはいえ、すぐに戦える状態ではない。であれば、彼に出来ることは腕の中にいる箒を守ることだけだった。
『がぁっ!』
エネルギーが残っていない状態での攻撃は彼に致命傷を与え、意識を刈り取った。
箒の意識が戻ったのは、そんな折だった。目の前で、自分を庇い苦痛に歪めて意識を失っていく一夏の顔を見た箒。
『一夏ぁぁぁっ!』
その時、彼女の中にも一夏のそれに近い脈動が走る。しかしその突然の感覚を使いこなすには至らず、一夏はただ海へと落ちていく。助けようとも、エムの妨害によりそれも叶わない。
エムの顔はヘッドセットのようなもので覆われているため表情の全貌はわからないが、エムの口元は嗜虐的な笑みを浮かべながら、箒への直撃を避けつつ嬲るように攻撃を加える。
自分の無力さを噛みしめながら、少し前の浮かれていた自分を呪いながら、ただ落ちていく一夏を見ることしかできない。
『一夏、一夏ぁ!』
彼女の叫びは今は何の効力も持たず、一夏は海へと沈む。その瞬間、箒の中で何かが弾けた。
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