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剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
第二話 騎士へと至る道
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勝手に決めたことで、こんな迷惑……」
「私は迷惑などと思ってはいません」
「でも―――っ」
「―――ティファニア」

 風が吹き付け、セイバーの複雑に編み上げられた金色の髪の一房が揺れる。流れる髪に導かれるようにセイバーの顔が、自身の背後に不安気な様子で立つティファニアに向けられた。厳しく引き締められていたセイバーの顔が緩み、ティファニアを安心させるように笑いかける。

「あなたの覚悟と決断は誰にも恥じることのない素晴らしいものでした。エルフと恐れられると知りながら、それでもと逃げないあなたの姿は尊敬に値します。そんな強く美しいあなたを守る事は、迷惑どころか誉れでしかありません。それに、覚えていませんか?」

 悪戯っぽく口の端を曲げたセイバーは、ティファニアに背中を向けながら笑い混じりの声で告げ―――、

「結果がどうなろうと、必ずあなたを守ると誓ったことを」

 ―――杖を抜き放った騎士たちに向き直った。

 教室の窓から外へと飛び出たセイバーは、そのまま駆け抜け出しアウストリの広場で足を止めた。寮塔、土塔、本塔、水党に囲まれたアウストリの広場は広く、空中装甲騎士団(ルフトパンツァーリッター)が揃っても全く狭いとは感じないほどである。騎士たちがセイバーに追いつき杖を向けると、セイバーたちを追って駆けつけてきた生徒たちが、遠巻きに取り囲み始めていた。決闘の観客のようにセイバーと騎士団を取り囲む生徒たち。その中心には、それぞれ自分たちの守るべきものを背に向かい合っている。
 傍目から見ればそれは勝負にもならないと感じるだろう。
 完全武装の騎士団に対するのは、甲冑に身を包んでるとは言え、たった一人の少女。それも花を摘んだり刺繍をしたりするのが似合うだろう華奢な少女だ。
 だが、相対する騎士たちの目には油断の色は見えない。
 確かに姿形だけを見るならば、片手でもあしらうことが出来そうだが。先程の教室での一件で、見た目とは真逆の存在であることを騎士たちは理解させられていた。
 竜巻のような魔力の奔流。
 小さな身体が巨大に感じられる程の威圧感。
 刃物のように鋭い視線に欠片の隙も見当たらない姿。
 白銀に輝く手甲で覆われた手には何も持ってはいないが、不用意に近づけば斬り伏せられると言う妙な確信があり、騎士たちは近づくことも出来ないでいた。
 緊張に額に汗を滲ませる騎士団に対し、しかし、セイバーは涼やかな顔で無造作に立っている。杖も剣も何も持っていないにも関わらず、その顔には危機的なものを一切感じさせない。ただあるがまま、自然体で騎士団と向き合っていた。
 騎士団とセイバーが対面し、だが何も起きずジリジリと時間だけが過ぎていく。セイバーたちを取り囲む生徒たち(観客)も時と共に増え、今では学院中の生徒がいるのでは
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