第十二章 妖精達の休日
第二話 騎士へと至る道
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の鎧に紺碧の服。
複雑に編み込まれた髪が日の光に照らされ、まるで王冠のように眩く輝いている。
麗しい顔を厳しく引き締め、ピンッと背を逸らし立つその姿は、神が創り出した己に仕えさせるための騎士のように何処か触れ難い神聖さを放っていた。
教室にいる者たち全てが息を飲み、その奇跡のような美しさに見惚る。シンっと静まり返った教室の中、静寂を破ったのはセイバーの声であった。
「ティファニアの言葉に嘘偽り等はない。彼女は真実あなた達との友誼を交わしたく思ってこの学院に来たのだ。正体を隠していたのはエルフと言う存在が皆に恐れられるものだと知っていたからこそ、余計な混乱を避けるためのもの。何も良からぬ事を考えていた理由ではない。だが、それでもやはり正体を隠しているのは騙しているのと同じと、非難されると知りながら、ティファニアは自らの正体を証したのだ」
スッと、セイバーの目が細まる。
「―――その覚悟と決意に対する答えがこれか」
斬りつけるような鋭く重い言葉。細められた視線がベアトリスの前に並ぶ騎士たちを見回す。
既に隊長がセイバーに突きつけていた杖は、頭を垂れるように力なくダラリと垂れ下がっている。それはベアトリスの前に壁のように立つ騎士たちも同様であった。今にも膝から崩れ落ち、床に尻を着けそうになるのをガクガク揺れる足で必死に耐えている。
ハルケギニア最強と謳われる竜騎士隊“空中装甲騎士団”の隊員たちは今、混乱の只中にいた。
常日頃、最強の幻獣である竜に乗る彼らにとって、大抵の生物は怖いとは感じない。竜を乗る者たちに、そんな弱い心を持つ者などいないのである。野生の竜程ではないが、それでも騎竜とする風竜の恐ろしさは並大抵のものではない。実際に竜騎士を目指し、しかし、竜を目の前にして怯えて一度も騎乗することなく去っていく者も少なくないのだ。
竜も自分を恐れ怯える者を乗せる筈もなく、竜騎士には並外れた胆力が必須なのである。
だが、その並外れた胆力を持つ筈の竜騎士たちは、抱きしめたら折れてしまいそうな程華奢で可憐な少女を前にして怯えを隠せないでいた。
紺碧の衣装に白銀の甲冑を身に纏っているが、しかし少女である。
絵画に描かれる戦乙女のように美しさはあるが、何処からどう見ても強そうには見えない。
しかし、
―――な、何なんだよコレは―――!!?
その小さな身体から滲み出る強烈なプレッシャーは、彼らの知るどんな存在よりも比較にならないほどに大きかった。
例えるならば―――竜。
それも強大な―――それこそ自分たちの知る竜などよりも何倍―――否何十倍と大きく強力な竜。
緊張と混乱、そして恐怖により騎士たちが目眩や吐き気をもよおし始め
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