暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
終わりゆく陽だまりの日常
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後に逃げられるなんて幸運、そうはないわよね」

 マスターを殺す必要性。

 イリヤスフィールは理解した上で……言っているのだろうか。

 もしも誰かにマスターは殺さなければいけないものだと、漠然と教えられているだけならば、彼女が誰かを手に掛けることは間違っていると思う。

 だが止められるのか、何をどう言えばその認識が覆る?
 既に手を血で染めた俺に、そんなことを宣う資格があるのか?

 分からないが、少しでも伝えなければ。

「イリヤスフィール。マスターを殺すのはどうしてだ?」
「え……?」

 そんな問いが飛んでくるとは予想だにしていなかったのか、目を点にしている。

 しかしすぐに何でもないことかのように、彼女は答えを返してきた。

「お爺さまがそう言っていたもの。私はアインツベルンの中で一番マスターとして相応しいから、聖杯戦争に参加しなくちゃいけないって。
 だからサーヴァントもマスターもみんな、私が殺さなきゃいけないの」

 ────なるほど。そのお爺さまとやらがアインツベルン家の宗主なのか。
 イリヤスフィールに聖杯戦争に関する知識を与え、恐らくはサーヴァントさえも御膳立てしたのだろう。

 都合のいい人形に仕立て上げた、とは思わないが、無知なこの子への教育にしてはあまりにもお粗末が過ぎる。
 例えば数学の問題で答えを教えてしまうから、公式を知らず当てはめかたも知らず、自分で考えることもなかったというような。

「お爺さまに言われたから、なんて理由で聖杯戦争に参加しているなら、イリヤスフィールは戦わない方がいいし、誰かを殺すなんてしない方がいいと思う」
「むっ。私は生まれたときからマスターなのよ。聖杯戦争に参加するのは当たり前で、戦うのも当然よ。お爺さまに言われたからじゃないわ」
「その生まれたときからマスターっていうのも、戦うのが当然ってのもお爺さまとやらの言い分じゃないのか」
「────ふうん。私に戦うなっていうのは、貴方が死にたくないから?」

 論理が一つ飛躍した気がするが、彼女の中にある知識に照らし合わせて現状の俺を分析したらそう捉えられるのか。

 命乞いなんてみっともない真似をしているつもりはもちろんない。
 ここで言葉を誤ればずっと間違えたまま進みかねないこの子に、少しでも疑問を持ってほしいだけだ。

「いいや、そうじゃない。じゃあさ、誰かに会いたいって言ってたのはお爺さまに言われたからか?」

 二度の出会いで感じた中で、一つだけ分かっていること。
 この無垢な少女の"会いたい"という感情は、自己から発生した願いのはずだ。

 誰かからの教えや影響ではなく、自分で考えてしたいと思ったこと。

「……違う、けれど」
「前にも、楽しくない
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