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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
終わりゆく陽だまりの日常
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仕方ないな!」

 スーパーに来た時間のせいで少し出遅れている形だ。

 おばさま方の波を掻き分け、強引に割り入りながら突き進む。
 アクシデントで拳や肘が当たるのはあたりまえ、時には明確に押し退けられながらも絶対に諦めない。

 人の波が少なくなるにつれ、限定合挽き肉パックの数も減る。

 目測残数は13。入手可能確率60%。



 行ける────その確信と共に踏み込んだ。



 横を見れば士郎も同じく強引に踏み込んでいる。
 品物まで手を伸ばせば数メートル、たったそれだけの僅かな距離。
 ほんの数歩まで迫ったその場所が、今は果てしなくどこまでも遠い。

 進まない身体。減っていく合挽き肉パック。
 目の前で消えていくそれを目にしながらも、未だこの手は何も掴めない。

 宙で藻掻く手。前進してもまた引き戻される。
 後三歩、二歩と。ゆっくりと、だが確実に近づく中、とうとうパックの数は10を切った。
 だがここでようやく指先がパックの端に引っ掛かる。そのまま指先で摘み上げ、一気にこちらへ引っ張り上げる。

 勝利の確信は、しかし一瞬で覆される。

 指先で摘んだ程度の力では人波に耐えきれず、何処かへと弾き飛ばされる合挽き肉。
 マジかよと絶望しかけるが、飛んで行った合挽き肉パックをキャッチする力強い手。

 そこには衛宮士郎の姿……希望が舞い降りた瞬間である。

 これでワンパックは確保済み。
 後は欲望のままに、もうワンパック手に入れられるかどうか!

「うおおおおぉぉぉッッ!!」










「よっしゃああああああああああああああああああああ!!!」

 完全勝利の雄たけびと共にスーパーを跡にする。

「大変だったけど、これで黎慈への借りが一つ返せたなら安いもんだ」
「デカい。これはデカい。合挽き肉400gが200円未満で買えたのはパーフェクト」
「肉類はこないだ鶏肉を安く買ったからなぁ。黎慈は、今日の買い物はこれで終わりか?」
「ああ、野菜と肉買っちまえば後はどうにでもなるからな」

 両手に袋を抱えてホクホク顔である。

 今日はボルシチとピロシキでも作るか。
 スープ系とピロシキは相性抜群である。日本で言うご飯と味噌汁のようなもの。
 どのスープにはどのピロシキが合うか、という組み合わせの研究が今でも続いているほどだ。

「じゃあここでお別れだ士郎。キャスター相手だ、凛の足引っ張るんじゃねえぞ」
「精一杯やるさ。こっちにはセイバーも居るしな」

 お互いに買い物袋を掲げる形になりながら、手を振って別れの挨拶をする。

 そうだな、士郎は悪いヤツじゃない。
 くだらない性根で誰かを傷つけることもない。
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