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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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きますね」
「金が有る時はビニ弁だからね、平気平気」

 そう、もう独り暮らしして以来の三年もの間、友人と外食する以外はこればっかりである。それでも大病はした事がない辺り、異常に頑健な体である。
 しかし、そんな体でも流石に日射病と熱射病には弱いのか。ズルズルと、涼しい室内で啜る熱いラーメンという贅沢を堪能していると。

「あの、これ……どうぞ」

 差し出されたのは、弁当箱の蓋に盛られたポテトサラダとアスパラのベーコン巻き。そして卵焼きと、尻尾付きの海老フライ。
 それは彼女の小さな弁当のおかずの、実に三分の二程の量だ。

「……いいのかい?」
「い、良いからあげるんですっ。それに、そんな不摂生で倒れでもしたら、風紀委員(ジャッジメント)の名折れですから」

 『むしろ、君の方が倒れるんじゃないか?』と割り箸を銜えたままぱちくりとそれを見ていると、元々照れ気味だった飾利は、更に顔を赤くして。

「だいたい、カップ麺とかコンビニ弁当だけじゃ、いつか体を壊しちゃいますから。ちゃんと野菜も摂ってくださいね」
「えっ、だってカップ麺にも野菜が十分」
「入ってる訳があ・り・ま・せ・ん。もう、無頓着過ぎますよ……」

 繁々と見詰める蜂蜜色の瞳に、花束の少女は呆れたように、照れ隠しのように呟いた。

「か……神様、仏様、飾利様。このご恩は、生涯忘れません」
「へぅ、や、やめてくださいよ〜。それに、嚆矢先輩には『虚空爆破(グラビトン)事件』の時に助けて貰いましたし……その、ささやかな恩返しです」

 次いで、椅子に正座してテーブルに平伏した嚆矢が飾利を拝み始める。勿論、人気の集中する空調近く。更に、休憩時間の昼飯時。

「くうっ……苦節十八年、まさか女の子の手作り弁当を食する日が来るなんて……良かった、生きてて……」
「そ、そんな大袈裟な……それに、手作りって言ってもほぼ冷凍食品ですし」

 有り難く、先ずは野菜から片付ける。何故なら、余り好きではないから。食えない訳ではないが、どっちかと言えば肉類好きである。
 そして何より、楽しみは最後に取っておく性質(たち)なのだ。

「さて、次は……卵焼き。これと海老フライはどう見ても手作りだね」
「ま、まぁ……あの、今日の卵焼きは結構自信作なんですよ」
「うん、分かるなぁ。綺麗に焼けてるし……うん、出汁が効いてる。甘さもクドくないし、絶品だよ」
「あ、えへへ……ありがとうございます」

 既に、周りには同じように昼食を取りに来た風紀委員が多数。そんなところでこんなバカップルのような真似をすれば、当然ながら周囲から妬みの視線や舌打ちが聞こえてくる。
 だが、そんなものは今は何処吹く風だ。小粒とは言えど、掛け値無しの美少女のご相伴に与れるなどはあと
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