第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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り付いた笑顔を、一度も変えずに。そもそも、薄絹の奥の唇すら動かしていないのに。そんな事にも、今の今まで気付かなかった。
緊張しながら、微かに震えながら。学ランの裏に隠匿するガバメントを握る。魔術師相手には心許ないが、人類が携行できる科学力では現代の最高水準たる『拳銃』でも、気休め程度にはなる。
「じゃあ、またね〜。右手、大事にね、『■■■■』閣下?」
「――――ッ!」
「――――ふきゃ!?」
掲げられたランプ、そこに灯る赤い焔が、まるで生き物のように揺らめいて肥大し――――破裂した。
「チッ……」
後に残ったのは、いつの間にか聞こえなくなっていた、喧しいまでの蝉時雨。思い出したように肌を苛む陽射しと湿度。
「ふぇぇ……あ、あれ? あの人は……」
女は、影も形も。最早、近くには居ない。居たとしても、果たして本当に『人』だろうか、あれは。
ほんの刹那、感じた気配。ステイル=マグヌスが『魔女を焼き尽くす地獄の業火』であるなら、あの女の焔は――――
「……まるで――――『命を持つ恒星の核』……だな」
怖気と共に、吐き捨てた生唾。それに乗せて、少年は狂気を押さえ付ける。
その、強張った顔を解すように、二度ほど張った。
「一先ず帰ろうか、飾利ちゃん。もう、いい時間だ。昼飯にでもしよう」
まだ状況が飲み込めていないらしい飾利の様子に、安堵して……。
………………
…………
……
室内に入った瞬間、『空調は人類最高の発明品だ』と飾利と語り合い。一旦、身繕いの為に別れた後で、休憩室の空調の前に再集合して陣取る。
「お待たせしました、嚆矢先輩」
「いやいや、ちっとも」
学ランを椅子の背凭れに掛けてカッターシャツ姿になった嚆矢は、弄っていた携帯を仕舞いながら、そう笑って告げた。
飾利は自分で作ったらしい、可愛らしい包みの小さな弁当をテーブルの上に広げて。
「あの、嚆矢先輩……お昼、それだけですか?」
「ん? え、おかしいかな?」
嚆矢がテーブルの上に置いている、格安の豚骨味のカップ麺と半額シールの張られたお握り二つを見て、心配げな顔をした。
「おかしいと言うか……栄養偏りますよ?」
「大丈夫、偏らないように醤油、味噌、塩、豚骨、魚介、蕎麦、饂飩でローテしてるから」
「それ、完璧に偏ってますよぉ……」
はぁ、と溜め息を漏らした彼女。それを尻目に、嚆矢は適時となったカップ麺の蓋を剥ぎ取って割り箸を割る。
「いやぁ、どうも料理って性に合わないんだよね……何て言うか、分量とか待ち時間とか、どうもね。出来る事って言ったら、『線まで湯を注いで三分』が限界かな」
「それでよく、独り暮らしなんてで
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