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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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あの……まだ痛むんですか、嚆矢先輩?」
「ん……あ、いや。首の方は別に何ともないさ、飾利ちゃん」

 心配げに訊ねてきた飾利に、僅かに笑いながら答える。無論、首は動かさない。
 先程の黒子のスタンピングによって軽く脛椎を捻挫した訳だが、その黒子の手当て中だった飾利が持っていた救急箱のお陰で事なきを得ている。

「自業自得ですの。嫁入り前の乙女の肌に触れるようなケダモノには」
「ちょっ、ちょっ、白井ちゃん。往来でそんな…………はい、私が悪うございました」

 少し先を歩いていた黒子の、青筋を浮かべた笑顔に軽口を止める。次に同じことをヤられたら、今度こそ首から下が動かない体にされる事だろう。

――まあ、『空間移動(テレポート)』ばかりはどうしても『確率』とか『理合』が反映される予知が無いし……珍しい能力なのが救いだけど、ホント俺って空間移動能力者(テレポーター)が天敵だな……。
 どうにかして克服しねェとな。『大能力者(レベル4)』の能力者に負けてるようじゃ、『第七位(ナンバーセブン)』に勝つなんて夢のまた夢だ……!

 と、若干腐りながらも、生来の反骨心からそんな事を考える。しかし、簡単な話ではない。
 自身で評した通り、彼の『確率使い』……『制空権域(アトモスフィア)』は勿論、身体強化の『神刻文字(ルーン)』、昨夜のように『機械人形(ゴーレム)』を生んだり、触れたものを分解・再構築する『錬金術(アルキミエ)』も、『あらゆる防御を無視する』、『触れた瞬間に離れる』、『相手すら飛ばす』彼女の能力の前には無意味だ。

――殺すのが目的なら『触れた瞬間に分解』するだけで済むが、それも『物を体内に転移』とかされたら攻略されちまう。やっぱり、何か対策を講じないとな。

 肩を怒らせたままで前を歩く、非常に絡みづらい少女。学園都市230万人中58人しかいない稀少能力の持ち主の中でも、五指どころか、間違いなく三指に入るだろう彼女を見遣る。
 白井黒子――――嚆矢にとっては、初めて会った空間移動能力者(テレポーター)。知識としては『空間移動能力者が天敵』として()()()()()()()が、実際に相手にしたのは彼女が初めてだ。敗北自体は別に、慣れたものだが……初見とは言え、ああまで無様に負けた事は――――最近の『ステイル=マグヌス』も含めて、僅かに数人。

――それが、この少女。リボンで編んだ茶色のツインテールに常盤台の制服……灰色のスカートとクリーム色のベストに身を包む、(うら)らかな顔立ちの少女。
 十人が十人、美少女と答えるであろうその容姿、しかし惜しむべきかな。彼女は――――所謂、『百合』である。

「――何を見ていますの?」
「えっ、あっ、いや……別
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