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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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むような悪夢が、意味の無いものであると知って。

「とは言え、心が弱い者は本当に発狂するレベルですから。気は抜かないように」
「なんかもう、ニアルさんの言葉は信じられないんですけど……」

 忠告も、今は白々しく聞こえると言うもの。不貞腐れながら片肘……左腕の肘をカウンターに突いて、アイスコーヒーを飲む。
 まだ、右腕は動かし辛い。癒しの神刻文字(ルーン)を刻んで数時間は経つと言うのに、だ。

「はは……そう言えば、先程の話で『夜間の魔術の調子が良かった』と言っていましたが、具体的にはどれくらいです?」
「そうですね……昼間はスクーター一台を錬金術(アルキミエ)でカスタマイズしたり神刻文字(ルーン)五文字刻むだけで軽い交通事故レベルの頭痛なんですけど、夜は車一台を右腕ごと機械兵器(ゴーレム)に作り替えて強化に五文字ずつ刻んだら……右腕が、酷い筋肉痛になったくらいです」

 フム、と。師父は先程から百八十度正反対の、真面目な顔となる。顎に手を当ててじっとこちらを見詰め、深く思考している。

「一概には言えませんが、恐らく、君には『夜に三倍の魔力を発揮する』ような性質があるのではないでしょうか?」
「そんな事、あるんですか?」
「無いとも言えませんよ。例えば『円卓王(キング・アーサー)物語』の、『円卓の騎士団(ナイツ・オブ・ラウンド)』の一人……聖剣『日輪の剣(ガラティーン)』の担い手である『緑の騎士』ガウェイン卿は、日中は通常の三倍の力を発揮したと言いますから」

 そんなものだろうか、と納得するようなしないような。先程の事もあり、半信半疑である。
 何より、『円卓の騎士』だのと。義母(はは)のネガキャンで『騎士の皮を被った蛮族集団』、『疑心暗鬼で内部崩壊した騎士団(笑)』と散々に言われていたモノを引き合いに出されてしまっては。

「何にせよ、唯一錬金術の秘奥『賢者の石』に達した『三倍偉大な水銀王(ヘルメェス=トリスメギストス)』に通じるモノがある。目を掛けた甲斐がありました」
「へいへい、ノせられ易い弟子で悪ゥ御座いました」

 そこでアイスコーヒーを飲み干し、勘定を置く。ニアルは年代物のレジスターを弾くと、釣りを渡した。
 因みに、この店ではカード類は一切使えない。『表の商品』も『裏の商品』も全て、本来は現金一括払いである。

「帰りは雨になりますよ、事故には気を付けて」
「降りだす前には帰り着きますから、大丈夫です。御馳走様でした、また今度」

 挨拶を交わし、弟子は土の香りと――――磯の香りが入り交じる、雨降り前の曇天の下に。
 湿った空気は、降り出すまでもう時間が無い事を示している。

「次は是非、食事も頼んでください。コーヒー一杯で一時間なんて、普通は迷惑客扱いですよ
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