第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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とグラスが澄んだ音を奏でる室内。年代物の蓄音機に掛けられたレコード盤から、落ち着いたブルースの流れる純喫茶『ダァク・ブラザァフッヅ』のカウンターに座る嚆矢は、相談を伝え終えてアイスコーヒーで喉を湿らせた。
対面には、浅黒い肌の知的な紳士。紫煙を燻らせながら、燃え盛るような紅の瞳で……手元の1920年代の英字新聞『アーカム・アドヴァタイザー』を読んでいる。見出しの一つには、『現存した魔女の家。取り壊された壁の中から、無数の白骨死体と鼠じみた謎の生き物の骨が見付かる……』と言った内容の記事があった。
「成る程……十字教徒に襲われましたか。確かに、彼らは魔導書を保管すると言う名目で蒐集していますからね。どんな使い方をしているかまでは知りたくもありませんが」
やれやれ、とばかりに単眼鏡を置いて、師父は視線を嚆矢へ向ける。そこには、『全てを知りながら』も口にはしないと言う意思。
彼は、人が『自ら答えを出すこと』を是としている。故に、安易に『回答』を示すような事はしない。
「……つまり、彼奴等は――――『禁書目録』とか言う存在を完成させる為に、魔導書を集めてる。俺は、『妖蛆の秘密』に『狙われている』から、狙われた……って事ですかね?」
「良く出来ました、その通りですよ。魔術師は元来、目的の為には手段を選びません。それが――――人の尊厳を、生命を踏み躙る事だったとしても。無論、私も含めて、ですがね」
ふっ、と気怠げに微笑みながらの台詞。意味ありげに細められた、紅の眼差し。
それは、まるで見定めるようだ。弟子の『素質』を矯めつ眇めつ。
「……まぁ、結局『現実』なんてのはそんなモンですよね。強い者が弱い者を食う、これだけ」
それに、苦笑を返す。別に今更、正義感を気取る程に平和な人生は送っていないし、どちらかと言えば『そちら側』の人種である。
笑いながら触れたのは、学ランの内側に仕込んであるガバメントと多目的銃剣。その、元々の持ち主達の事を思い出す。
――いや、顔も覚えてないが。まぁ、居たなくらいの記憶だ。今頃は土の下か、海の底か。何処で永遠にゆっくりしているかは、ニアルさんの言葉を借りれば知らないし知りたくもないが。間違いなくこの世には居ないだろう。
そして、それは――――『俺が死因』なのだ。直接、息の根を止めた訳ではないが、俺が彼等を死なざるを得なくした。そんな奴が、今更。
「俺も、暗部育ちですからね」
全ての意味を、そこに集約する。『感傷』なら、物心が付く前に捨ててきた。だから、今更――――そんなもの。
「……良い表情です、安心しましたよ、コウ
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