第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
21.Jury:『Deep Blue』
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楽しみにしていた物を食べられてしまったショックにすっかり塞ぎ混み、モソモソと塩気しかないパサパサのお握りを頬張りながら思う。
因みに、その『守護神』がすぐ近くに居るなどとは、想像だにしていない。
「いやぁ、今日も一人寂しくご飯を食べてるだろう初春の為に来たんだけど……余計なお世話だったかぁ。まさか、初春に『初春』が来てたなんてねぇ〜」
「だ、だ〜か〜ら〜! 違いますってば〜〜っ!」
「あはは、冗談だってぇ。初春は可愛いな〜」
耳まで真っ赤に染めた飾利は直角に曲げた腕でポカポカと、涙子に『あうあう』と迫っている。
その間にお握りを完食、スープを飲み干そうとカップの端に口をつけた嚆矢。
「――――っと!」
瞬間、涙子が『両手』を飾利へと差し向けた。それは、嚆矢の側からは良く見て取れない。
そして――――
「――――へあっ!??」
「――――ブふッ!??」
まるで『風に吹かれる』ように、飾利のスカートがフワリと舞う。それと全く同時に、嚆矢が飲んでいたスープを吹き出す。
「いよっし、絶好調! にしても今日はピンクと白のストライプかぁ……」
それは、おかしな事である。此所は室内、空調近くであのような風は吹きようがない。そして……涙子は、無能力者の『風力使い』だ。
「さ……さ……」
「ゲホッ! ゴホッ!」
だが、それには誰も気付かない。スカートが捲れた飾利はショックで凍り付いているし、嚆矢も豚骨スープが鼻に入ったせいで噎せてしまっている。
外野も見て見ぬ振りか、我関せずを貫いていたから。
「さぁて、日課も済ませたし、じゃあ私いくね。アケミとむーちゃんとマコちんを待たせてるから」
本当に、それだけをやりに来たのか。涙子は上機嫌でスキップしながら、休憩室を去っていった。
続き、他の風紀委員達も続々と。この後の事を察して、後を……嚆矢に託して。
「えほっ……か、飾利ちゃん?」
「さ……さぁ……」
漸くリカバリーし、恐る恐る飾利に声を掛ける。刺激しないように、慎重に。さながら、ニトログリセリンの加工のように。
それに、真っ赤を通り越して茹で蛸状態となっていた彼女は、油の切れた鉄葉の玩具のように、辿々しい動きで――――
「佐天さんの……佐天さんの…………佐天さんの――ばぁぁかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」
支部全体が揺れる程の、大音声を響かせた…………。
………………
…………
……
「全く……付き合ってられんな、『■■■■■■』」
その全てを、暗がりの廃ビルの一室からスコープ越しに覗いていた
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