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Eve
第一部
第一章
二人の仕事(1)
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くりした?」
俺がさっきまでのんびりと一仕事後の身体的疲れの癒やしを求めて一息ついていたトタン台のすぐ背後。ちょいと前かがみに立つ、見慣れた顔と見慣れた容姿。重力に逆らわずに下にサラッと流れるミディアムヘア。さっきまで一緒に配給の品々を配っていた幼女モドキが、こっちを見て不敵な笑みを浮かべていた。
「美羽か……急にやめてくれよな。」
俺は小さくため息を漏らす。
「へへっ。」
美羽がその場から台座の上から飛び降り、俺の隣にぴょんっとうさぎのように飛び跳ねてきた。そのまま俺の左腕をひっつかみ俺の周りをくるっと一周して、俺のすぐ右隣。今度は右腕にくっついたまま、純粋無垢な満面の笑みで俺の顔を覗いた。
「ったく。」
微妙に火照った頬を隠すように俺は左手で右頬を覆った。
……こいつ、わかっててやってるのか?
美羽に急に驚かされたせいもあって、まだ心の臓の鼓動は治まりを見せない。いや治まったら死ぬわけだがそうじゃなくて、速くなった鼓動が元の調子に戻るにはまだしばらくかかりそうだという話。久しぶりにあんな驚かされ方をした気がするけれども、まさかあそこまでびっくりするとは自分でも思いもしなかったしな。
でもそうじゃない。
「……」
「ん?恭夜くん?」
美羽が不思議そうな表情で俺の顔をじっと覗きこんできた。
……驚かされたのもそうだけれども美羽の顔があんな近くにあったら、それはそれで違う意味で心臓が高鳴るっちまうのもおかしな話じゃないよな?驚かされて心臓が高鳴った分が3割だとするならば、残りの7割は多分美羽の顔が近かったせいで……。
確かにこんな世界には住んでいるけれども、俺だって夢見る男の子ですもの。夢が枯渇した、希望に程遠い世界の住人ではあるけれども、本能には勝てませんもの!
「ふぅ……見境なしとはこのことか。」
俺は左頬に当てた手はそのままに、顔を左右に振って大きなため息をはいた。
「なんか、深刻そうな顔だね……」
ふと気づけば、美羽は引き攣った苦笑いを浮かべて俺の方をじっと見ていた。
「いや、ちょっとな……」
「……ふーん?」
どことなく棘がある頷き。ふーんとは頷いてはいるが、非常に疑わしそうな美羽のジト目が俺の目を見つめる。
そんな目で見られてもな……。
俺は目を逸らして頬をポリポリとかく。
美羽の行動にドキッとしちまったってことだけならまだしも、イブと美羽の二人を意識しているだなんてこと、美羽に言えるはずもなく。そりゃあ、いろいろな意味で言えるはずがないだろう。そもそも美羽はイブの存在を知り得ることはあり得ないわけで、美羽にはそんな話をしたところで、頭おかしい人呼ばわりされるのがオチだ。
そう。だから今は、話の腰を折って別のことに意識を向けさせるのが最善策なんだ。
「……よし。ほら、とりあえずいつもんところに行
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