第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第三節 月陰 第二話 (通算第12話)
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「どちらかというと連邦軍の物量作戦の賜物じゃないのか?」
カミーユがエレカのルーフを閉めた。風が煩わしく髪を撫で、癖の強い髪が舞うのが嫌だったのだ。
「そうでもないさ。公式記録じゃ水増しされてるって話だからな」
実際、《ジム》の生産機数は三二〇機で、《ジムキャノン》に至っては五九機しか生産されていない。チェンバロ、星一号の両作戦に参加したRX−MSは六〇〇機余りが本当の数字であるという。
「ほとんどボールだってことか」
「あとはコアブースターとセイバーフィッシュさ」
そうランバンがうそぶく。これも事実である。ビンソン計画で建造された艦艇の内、モビルスーツデッキを備えた艦はなく、ミサイル格納庫を改修しただけの積載スペースでしかなかったのだ。アンティターム級改装母艦が中継母艦として機能したが、それとて二十四隻しかなく、モビルスーツ運用は地球連邦軍にとってはまだ未確立であった。
それでもレビル、ティアンムの両大将は、再建なった宇宙艦隊をルナツーで再編し、第一連合宇宙艦隊をレビル大将が、第二連合宇宙艦隊をティアンム大将が率いルナツーから進軍した。連邦の動きが掴めぬままジオン公国軍はソロモン、グラナダ、ア・バオア・クーを絶対防衛線としてこれを迎え討つ構えをみせた。十二月十四日、《ホワイトベース》を筆頭とする独立機動部隊を囮とし、『チェンバロ作戦』が開始される。十二月二十四日、ウォルフガング・ワッケイン中将率いるルナツー防衛艦隊である第三艦隊が陽動を仕掛け、ティアンム大将率いる本隊が宇宙要塞ソロモンを〈ソーラーシステム〉で焼き尽くした。艦隊と機動歩兵師団の連携を断たれたドズル・ザビ大将は要塞放棄を決定、残存部隊の撤退時間を稼ぐため巨大モビルアーマー《ビグザム》で特攻し、ティアンム大将が座乗する旗艦マゼラン級宇宙戦艦《タイタン》と〈ソーラーシステム〉を道連れに壮絶な戦死を遂げた。
「コアブースターだってそんなに数はないんじゃ?」
「ほとんどはティンコッドのブースター付きだったらしいけど」
宇宙軍の次期主力航宙機として開発されていた《ティンコッド》は《コアファイター》のベース機となった程構造が似ていたため、ブースターを増設して《コアブースターイージー》として戦線に参列していた。可変機能を持つ《コアファイター》はコストが高く、生産性が低かったからだ。
「その航宙機もいまでは宇宙を飛んでやしない」
「宇宙じゃ機動性が高くなきゃ意味をなさないから、仕方ないだろ」
カミーユの言いようはミノフスキー粒子の撒布下が前提である。レーダーや電子機器が有効ならモビルスーツよりも航宙機の方が優れている面もある。平時のミノフスキー粒子撒布は禁止されたが、いざ戦闘状態になれば、ミノフスキー粒子が撒布されるのだから、どちらにも対応できるモビルスーツが優先されるの
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