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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第二節 配置 第一話 (通算第6話)
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掛ける気にはなれなかった。ブライト・ノアといえば、一年戦争で第十三独立機動部隊を率いて戦い抜いたニュータイプ部隊の司令である。たかが一度会ったぐらいの相手をいちいち覚えている筈もなかった。
「ほら行こうぜ?」
 ランバンをせっついて先を急ごうとする。そうしなければランバンはブライトに挨拶へ行きそうな勢いだったからだ。しかし、ブライトが二人の方に視線を注いでいた。
「失礼だが…?」
「は、はいっ!」
 ランバンが直立不動の敬礼を返した。苦笑するブライト。よく見ればブライトも私服である。だが、ランバンが敬礼をしてしまっているのに、自分だけやらないのは不自然だと思ったカミーユもランバンに倣った。
「何処かで会ったことがあるように思ったのだが、そうか、フォン・ブラウン校の士官候補生だったのか」
「覚えていていただけて光栄であります!」
 これはカミーユだ。ブライトにすれば、なんとなく懐かしい……そう、そこにいるのが当たり前だった一年戦争の時のアムロの様な雰囲気がしたから振り向いたのだ。だが、そこにはカミーユとランバンがいた。正直、残念には思っていた。そう、アムロが宇宙に来る筈はない。なのに何故?心の中で戸惑いながら、二人の少年に、任務に励むよう声を掛けて、立ち去った。
「ラッキーだったな?」
「あぁ…」
 ランバンは嬉しそうに握手をしてもらった手に熱い視線を送っている。
 カミーユは上の空だった。ブライト・ノアが自分をなんとなくでも覚えていてくれたことが、カミーユにはこの上なく嬉しいことだったのだ。その喜びに浸っていて、ランバンの声など馬耳東風といったところである。
「聞いてるのか?」
「うん…あ、搭乗開始だ。行こうぜ?」
「ちぇっ……ったく、全然、話聞いてないんだからさ!」
 ランバンは先に行ったカミーユに悪態をつきながら、後を追う。
 二人の搭乗する《ロンバルディアSSH−R46》は月に導入されている航宙旅客機では旧型の部類で、軍が手配した定期便であり、気の利いたスペースアテンダントも船内の娯楽も期待できそうにはなかった。二万キロメートルにもおよぶ月の玄関口である〈フォン・ブラウン〉と月の裏側である〈グラナダ〉では、如何にスペースシャトルとはいえど船内泊になるのは当然であった。
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