#7『ファーストリべリオン』:5
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ての斬撃、さらには突進攻撃まで繰り出してくる。凄まじいスピードの一撃が打ち出されるたびに、キングがひゅばっ、ひゅばっ、と、危なっかしい音を立てて攻撃を避けていく。
素人目に見ても、確実に押されているのはキングだ。実際に、彼の表情にもまた、焦りが浮かんでいる――――ことは無かった。
キングは、非常に涼しい表情をしていた。もちろん、戦闘の緊張からか表情は真面目に引き締まっていたが、しかしそこそこ余裕を以て、チャイネイの攻撃をぎりぎりで避けているような気がするのだ。
「貴様……」
それに気づいたのか、チャイネイはさらに攻撃のスピードを上げる。打撃、打撃、斬撃、打撃。打ち上げ、正拳突き、肘打ち、アッパーブロー、爪攻撃。だが、キングはギリギリのところでそれらを回避してしまう。
そこに至って、ようやくメイは思い出した。
そう、キングは転生者。『過去の自分達』が積んだ経験も使う事ができるのだ。彼が経験不足であるわけが無い。
いつの間にか、焦ったような表情を浮かべているのは、キングではなくチャイネイになっていた。
***
――――面白い、実に面白いぞ!
チャイネイは心の中の高揚感に、焦りと共に歓喜を覚えていた。この《魔王》と名乗った男は一級の力をもった戦士だ。確かに攻撃面・防御面では武器の性能に頼っている。体さばきも素人が多少強力になったようなものだ。所詮チャイネイの敵ではない。
だがしかし、彼の攻撃は《魔王》にあたらないのだ。それも、本の紙一重で。なぜか?
答えはいたって簡単である。チャイネイの攻撃を、彼が先読みしているのだ。何と言う洞察力。何と言う直感。それを平然とやってのけるこの男の頭脳は未知数だ。恐らく、本来は戦場に出て、武器を振るって戦うような人間ではないのだろう。武器だけでなく、魔術をも駆使して戦うタイプのように思えた。《ラグ・ナレク》以前の世界でなら、《魔法剣士》とでも言った職に就いていたのでは――――
「(……!?)」
その時だった。チャイネイの脳裏に何かが映ったのは。
それは、銀色の髪をした少年。年のころは十四歳ほどか。前髪だけが黒い。目の色は赤。その少年は、優しい笑みを浮かべて自分を見ている。だが、自分はどうやら人間ではないらしい――――
その奇妙な映像に動揺したせいだった。手元が狂った。《魔王》を狙っていたはずの打撃攻撃が大きくそれてしまったのだ。その瞬間に距離をとられ、さらに次元断攻撃。さすがのチャイネイもこれは全力で避ける必要がある。
大きくかがむと、後ろに向かって飛ぶ。空中で体勢制動をかけて、地面に足をついた瞬間に飛び上がる。
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