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邪炎騎士の御仕事
女狐の懐刀
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うのも本音であった。なにせこの少年、枷となるものがまるでないのだから。

 「ちっ……分かったよ。浚ってくればいんだろう?衣食住は流石に面倒見てもらうぞ」

 「あら、そこらへんを負担するのが世話するってことじゃないかしら?」

 意地の悪そうな顔で女傑がいう。

 「女物の服を俺に買えと?そもそも未成年の俺に不動産契約ができるか!?大体、誘拐してるわけだから表に出せないんだぞ。下手なところを選ぶわけにもいかない」

 怒鳴るように少年は言うが、女傑は涼しげな表情を崩そうとしない。

 「冗談よ。そんなに怒らなくてもいいじゃない。まあ、住居はこの貴方の私室でいいでしょ。どうせ、貴方は殆ど使っていないんだし。衣食はこっちで用意するわ。もちろん、かかった費用は貴方の報酬から天引きで」

 「好きにしろ」

 女傑の様子から、己をからかう為にあんなことを言ったのだと察した少年は投げやりに言った。何を言おうと、どうせもう全部決まっているのだと理解したからだ。

 「やれやれ、そういうところは貴方も子供ねえ。ここは我慢して自分に有利な条件をねじ込むべき場面よ。不貞腐れているべきじゃないわ」

 「ちっ……。なら一つだけ約束しろ。浚ってきた女に一切の介入は無用だ。そうだな――――――――俺の直属の部下という形にしてもらおう。組織の下種共の餌にすることなど絶対に許さない」

 「分かったわ。それにしても、浚ってくる前から随分過保護なことね。まだ有用な人材とも限らないでしょうに」

 女傑は言外にこう言っていた。使えない無能にそこまで手厚い保護は必要ないだろうと。なんとも、優れた才を愛する女傑らしい。

 「どんな形であれ、俺のせいで人生を滅茶苦茶にされるんだ。多少なりとも、マシな待遇にしてやりたいと思うのは当然だろう」

 「そう。まあ、貴方がそういうならいいけどね……。
 でも、きっちり骨抜きにして篭絡しなさい。それは絶対の条件だから」

 少年の言になんとも思わせぶりな表情で、女傑は妖艶に微笑む。しかも、今度は少年に微塵もその真意を伺わせない。それでいて、きっちり釘を刺すことも忘れないのだから、恐れ入る。
 それがなんとも苛立たしく、「女狐め!」と内心で罵りながら少年は背を向けた。

 「話は終わりだな。早速準備に取り掛かる」

 「あ、後一つだけ」

 「なんだ?」

 「貴方に今回の件であげられるのは一月だけ。それ以上は情報隠蔽が困難だし、貴方という最大戦力の穴埋めできる最長期間よ」

 「……了解した。一月だな」

 言葉少なくそれに応えると、少年は今度こそ足早に部屋を出て行く。

 「朗報を期待しているわ……って、聞いてないか。本当にあの子も変わらない事」

 女傑
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