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邪炎騎士の御仕事
女狐の懐刀
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直ることにした。自身も含め武闘派ではない彼女の派閥は実行戦力に乏しい。いや、いるにはいるのだが、精々が中堅クラスが数人いるだけで、突き抜けた強さを持つ者がいないのが実情である。故に、正体不明の少年は是が非にでも欲しい人材であったのだ。
 
 女幹部が観るのをやめた後も、隷属したリリムを従えて管理異界で無双の限りを尽くしていた黒騎士に彼女は覚悟を決めて相対した。下手に回りくどい事をするよりも、正面から誠実に勧誘した方がいいと判断したのだ。

 最初は一瞬殺されたかと錯覚するほどの殺気を叩きつけられたが、女幹部はそれにどうにか耐えて交渉に持ち込むことに成功した。そして洗いざらいぶちまけた。少年の異質さに興味を持ったことから初め、ここが自身の管理する異界でありリリムをけしかけたのも己であること、しまいには貴方が欲しいと勧誘の言葉で締めくくった。

 難航するかと思われた交渉だったが、女幹部が想定したより遥かにあっさりと事は済んだ。黒騎士たる少年は幾つかの条件をのむことと引き換えに、彼女の配下となることを了承したのだ。その条件は以下のようなものだ。

 一つ、少年は実行戦力として女幹部の配下となるかわりに、裏の世界での後見人となること
 一つ、裏の世界に属する者に対しては制限は無いが、無辜の民に対する殺傷任務は受けない
 一つ、少年の情報を秘匿し、関係の無い家族をけして巻き込まぬこと

 女幹部はこれを呑んだ。アナライズしたレベルの上では自身の方が上だと言うのに、なぜだか女幹部はまるで勝てる気がしなかったからだ。表面上のレベル以上に、少年はトンデモナイものを秘めているようにしか思えなかった。
 とはいえ、別段、過度に譲歩したわけではない。後見と秘匿は当たり前だし、折角の戦力を余所に奪われては堪らないから、最初からやるべきことである。元より彼女は武闘派ではないし、無辜の民に対する殺傷など必要がなければやるつもりも無い。仮に必要になったとしても、別段少年にやらせなければいいというだけで、他の適任者にやらせれば済む話である。むしろ、そんなくだらない制限で、目の前の黒騎士をむざむざ手放すなどありえないのだから。

 結果、穏便に少年を配下に加えることに成功した女幹部は、支度金代わりに用意できる限り最高性能のCOMPといくばくかの金銭を与えた。特別に育て上げたリリムをとられたのは少し痛かったが、黒騎士を手に入れるための代価と思えば安いものであった。

 この少し後、足りなかった実行戦力を少年を配下とした事で補うことに成功した女幹部は急速に勢力を伸ばし、ガイア教穏健派に女狐あり。女狐の傍らに『邪炎騎士』ありと知られるようになるのだった。





 ガイア教穏健派の大物にして『女狐』とあだなされる女傑の本拠地。その最奥において、滅多
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