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翅の無い羽虫
終章 また会えましたね
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くるかもしれませんよ」
「根拠もないのに?」「はい」
 ふたりは笑う。
「いつ死ぬかわからないが、今一瞬を楽しんでいこうと思う。変わらない毎日かもしれないし、またあんなことが再発するかもしれないけど、前を向いて最後まで生きようと思う」
「そうこなくちゃです」
「イノは、また旅立つのか?」
「はい、今日この国を出ようと思います。美味しいものがないですし」
「ははは! でも栄養配分は世界一だぞ」
「食べ物は美味しくないと食べた気になんないです」
「まぁな。俺も旅して、美味いもん食ってみたいよ」
「じゃあ一緒に行きますか?」
「いや、ここにいるよ。こんなしらけた街でも、どこか愛着があるからな」
「そうですか」
「それで、俺の病室に置いてあったこの薄っぺらい袋なんだけどさ、これもしかしてサプリメントか」
 私は袋から栄養剤を取り出す。
「はい、ミカドさんに買ってもらったんでそのお礼です」
「なにも同じやつ買って返さなくてもいいだろ。まぁ、ありがたくもらっておくよ」
「……じゃ、そろそろ行きますね」
 イノは少しさびしそうで、でも相変わらずの和やかな表情で一歩歩む。
「それじゃあな、イノ。
 ……ありがとな」
 イノは微笑んだ。穏やかに、優しげに、微笑んだ。
 そして、
「またいつか、会いましょう!」
 満面の笑みでイノは告げた。



 イノがこの国を去ってから時代は変わった。
 まずは、隣国が仕掛けた大国への宣戦布告。あれにより戦争が勃発するかと思いきや、あるトラブルが起き、戦争は互いに中止。降伏せざるを得なかった。
 そして、何故か隣国と大国が条約を結んだ。何を結んだのかは今の私にはわからない。
 そんなことよりも、いちばんの衝撃は、大国から植民地の解約、つまり、人体提供という悍ましい人口削減対策がなくなったのだ。そのかわり、年齢70代を迎えた老人は強制死去しなければならないという法律が認定されたが。まぁ、死なせる方法が安楽死なので苦痛は無いだろう。また、緩かった一人っ子政策も厳格化し、破った者は厳重な処罰を受けることになった。まぁ性的ストッパーの緩い奴等には丁度いいだろう。
 食糧対策もなんとかなりそうで、大国や隣国も何かしらの新開発や協力をしてくれている。他の州の国々も同様だった。
 戦争が無くなることはなかったが、それでも数は減った。
 まるで世界がひっくり返ったかのような、そんな時代を迎えた。そうなったきっかけは多分、あの旅人のおかげだろう。何をしたのかわからないが、私にとってこの国を、世界を変えたと言っても過言ではない。
 巣食われていた私たちの国はあの無邪気な旅人に救われたのだ。
 馬鹿げたことを考えているかもしれないけど、もしかしたら、あの人はこの世界を救いに来た神様かも知れな
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