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乱世の確率事象改変
残るは消えない傷と
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めた。そうなる事も考えられずに人質として差し出す事を呑んだお前達の失態だな」

 冷たい瞳は、この場にいる全員を蔑んでいた。
 私と思春は思わず歯を噛みしめた。人質として求めたお前達がそれを言うな、と言いたくても言えなかった。
 姉さまは目を細めて「それで?」と続きを促す。

「そこからは予測も着いているだろうし、知っている奴もいるはずだ。私達は小蓮と友達になり、楽しい平穏な時間を過ごしていた。それをぶち壊したのが貴様らだ」

 直ぐに目を閉じ、紀霊はそれ以上何も言う事は無いと押し黙った。
 本当かどうか、などは分かっている。小蓮があれだけ染められていた時点で、本当にあった出来事なのだ。
 そして、紀霊はきっと袁家にいいように使われていただけ。

「他には……って、あんたは頑固だから、袁術達の事を聞いても話さないんでしょうね。これ以上は無駄だし、さっさと頸を飛ばさせ――――」
「待って姉さま! 一つだけ言っておくわ紀霊。小蓮を守ってくれてありがとう」
「なっ……蓮華様!?」

 姉さまの言葉を区切って紀霊に頭を下げた。思春は急いで咎めようとしたが、やれやれと額を抑えた冥琳に手で制されたようだ。

「……吐き気がする。お前からの礼など受け取らない。妹の代わりに、お前が人質になればよかったのに」
「そう言われるのは分かってたわ。でも助けてくれた事に変わりはない。お前が袁家の人間だとしても、私はその行いに感謝を伝える」
「生真面目バカの次女らしいか。だが……私はお前だけは絶対に許さない。ありがたいと思っているなら、お前は今ここで自害しろ」
「出来ないわ。自害するならとっくにしてる。私は罪を背負って尚、家族達と平穏で幸せな世界を作りたいもの」

 瞬間、紀霊の瞳が見開かれた。怨嗟の色が濃いその眼を向けられ、私はほんの少し鼓動が跳ねた。これはきっと……自責から来る恐怖。

「ククっ、ははっ! 貴様は! 小蓮の幸せをぶち壊しておいて、その口で家族の幸せと宣うのか!
 愚かしい! 汚らわしい! 厭らしい! 貴様は袁家と同じだ! あははっ! 綺麗事も大概にしておけよ孫権!」
「貴様ぁ! また蓮華様を貶めるかっ!」
「黙れよ甘寧、ククっ! これが笑わずにいられるか! 孫権、この偽善者め! 小蓮を本当の意味で幸せに出来ると、貴様はそんな妄想を思い描いているのか!」

 偽善者、その言葉は重く私の心に圧し掛かった。
 守りたいと願ったモノを傷つけて、私は矛盾を貫こうとしているのだから当然。何か言い返そうとしたが、小蓮の泣き声が思い出され、声が詰まって言葉が出ない。

「おい孫策、貴様もコレと同じ事を言うのか?」
「……否定はしないわ。どっちが悪いなんて下らない論を交わすつもりも無いし。さっ、冥琳、そろそろこいつ殺
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