残るは消えない傷と
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袁家の陣容は三つの櫓を寄せ会わせて兵達が方円を組み、さらにそれを五つに分けて広く長く横に広がっていた。
両端の櫓郡が前、二つが後ろ、中央がその中間地点に位置するように。一番の中央に麗羽は居座っている。
愚かしい……と祭は鼻で笑う。
――どうせ狙われる事が無いから、ど真ん中でふんぞり返りたいとかそんな所じゃろう。目立ちたがりで傲慢な袁紹らしい。
何時でも、麗羽がバカを演じていた為に、孫呉側は彼女の有能さを知らず、無能であると断じている。
例え冥琳が一目置いている田豊がいようとも、総大将足るモノの言は絶対の意味を持つ……と連合でも偽りの姿が証明された。
それは虎牢関に愚かしく取り着き、陳宮の策に大損害を受けた様を見ているから。劉備軍と公孫賛の連携があってこそ、シ水関で華雄を討ち取れたのだと思い込まされたから。洛陽でも臆病に総大将が最後方で構え、勝敗が決した最後に漸く重い腰を上げたから。
田豊が優秀な軍師だからこそ、もっと有用な策を献策出来たはずだ……そうなるように、思考を限定されている。
だから祭は気付かない。麗羽が未だに高笑いを上げ、五つの内一つの櫓群の最上部に人が居なくなろうとも、兵数の利でごり押し出来る……などと愚かしい事を考えてはいない事に。
何も対処という対処の無いまま、三つの櫓の最上部には誰も居なくなった。当然、麗羽から離れた所である為に、短時間で制圧されれば気付けるはずも無いのだが。
田の旗と郭の旗を反対側と中央付近に確認していたから、祭は右から攻めた。
櫓から矢が来ないと見て、まず飛び出したのは神速と謳われる霞の部隊であった。
祭はその部隊の速度に称賛の吐息を零す。
一部の乱れも無い動きで突撃する騎馬隊は、まさしく神速。方円の最中央に当たるや否や、瞬く間に敵の陣容を乱していく。
「神速とはよう言うたモノよ。あれの二つ名にはそれ以外は認められんじゃろう」
声に出して褒めた。神速こそ張遼の名に相応しい、シ水関から虎牢関の間でも、その用兵の素晴らしさと隙の無さを目にしていたが故に。
居並ぶ兵達もその部隊の迅速さと勇猛さを見てゴクリと生唾を呑み込む。されども、祭が楽しげであるがゆえに、心に不安が湧く事は無い。例え敵として現れようと、我らならば打ち倒せるのだと。
一つ一つ制圧し、中央まで片付けられれば祭にとっては最善。
張遼隊が顔良隊とぶつかるのを確認して、祭は声を上げた。
「よし、我らも敵左翼の制圧に参加する。一刻でも早くあの場所を抑え、ひよっこ共に次の仕事場を与えてやれ」
そうして彼女の部隊は突撃を仕掛けて行く。なんら、自分達の行動に違和感を挟まぬまま。
敵右翼からの兵は、櫓による被害を少々受けながらも郭嘉率いる兵が上手く抑え、中央からの兵も、穏が合
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