拠点フェイズ 4
拠点フェイズ 北郷盾二
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て同じく用意していた酒と盃を出す。
「座って話そう……これは馬正にも話しておきたいんだ」
「………………うん」
桃香は、そのまま布の上に座る。
俺は盃に酒を入れ、桃香に渡す。
「ご主人様、お酒は……」
「これは甘酒を濾して澄ませたもの。酔う成分はほとんどないよ」
料理長に頼んで作ってもらった甘酒を口につける。
糖分は、気持ちを落ち着かせてくれる。
「……一刀が、帰ってきたよ」
「うん……おめでとう、ご主人様」
「ありがとう……思えば、一刀を助けてくれと頼んだ相手が、君でよかった」
「そんなの……私、何もできなかったのに」
「いや……十分、君は俺を助けてくれたよ」
そうだ。
こんな世界にいきなり連れて来られ。
右も左も分からない状態の上、一刀は目覚めない。
アーカムの仲間とも連絡が取れない。
俺一人だったら……途中で壊れていたかもしれない。
「あの時……実は結構テンパ……混乱していた。君たちがいなければ、俺は狂っていたかもしれない」
「そんなの……こっちこそお礼が言いたいよ。私はあの時……すべてを諦めようとしていたんだし」
「……諦める?」
「うん。みんなを助けたい。でも、私一人じゃ助けられない。愛紗ちゃんや鈴々ちゃんがいても、その術が見つからない。私の道は間違っているかも……そんな風に思ってた。だから……天の御遣いという占いに縋ったの」
「それが俺と一刀……」
「うん。私はきっと、ご主人様と出会わなかったら、全てを諦めていた。ただ世の中を儚んで、腐っていただけだったと思う。そうすれば愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも、きっと私から離れていた」
「……あの二人が、桃香を見限るなんてことは絶対ないさ」
「……人の心は変わるもの。良くも悪くも……絶対なんて、ないかもしれない」
桃香は、そう寂しく笑って盃を煽った。
俺は、その空の盃に甘酒を注いでいく。
「そうかも、な……だけど、変わらない絆だって絶対にある。君たちの桃園の誓いは、そういうものだろう?」
「そうかな……そうだと、いいな」
桃香は自嘲気味に笑った後、俺に微笑み。
「ごめんね。ご主人様の話なのに……なんか遮っちゃって」
「いや……嬉しいよ、話してくれて」
本音だ。
桃香の本気の悩みを……聞けた気がする。
……話しづらいな。
「あの時……桃香に力を貸すと言った時の、俺の言葉を覚えているかい?」
「え? えと……私の大志は、未完成だけど、間違ってはいない。だから力を貸してくれる、だったかな?」
「ああ……だが、こう言ったんだよ。『劉玄徳を万難から護り、『矛』である一刀の目覚めるときまでは『矛』ともなり……貴方の恩義に報いることを誓う』と……」
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