拠点フェイズ 4
拠点フェイズ 北郷盾二
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来ている。
久しぶりに漢中の外に出た。
移動中は、馬の上で仮眠が取れるから楽でいい。
深く眠ると……またあの夢を見るからな。
「これはご主人様……そうですね。なんとかやっている、という感じですな」
「……指揮官としての見込みを。正直に言ってくれ」
「……………………今の段階では、おそらくご主人様の代わりは務まりますまい。精々、警邏隊の隊長か、副将が精一杯でしょう」
「そうか……」
元々、一刀に人を指揮する才覚は殆ど無い。
あいつは人に甘すぎる。
人を人としか見ることができない。
それは美徳だ。
だが指揮官は、時として人を駒にしなきゃいけない。
効率を優先し、兵に死ねと言わねばならない。
綺麗事が通じず、クレーバーに物事を考えなきゃいけない。
理想を抱きつつ、人を愛しすぎず、それでも効率的に兵を殺し、敵を屠る。
そうでなければ、守るものを守れない。
だから桃香や一刀は……兵を率いることができないのだ。
人を愛しすぎるが故に。
「一刀がただの警官なら……いや、警視や隊長なら、多分人徳あふれる馬正に比肩しうる存在になっただろうな」
「……そちらの方には就けない、と?」
「俺の存在がそれを許さないさ……例え、俺がいなくなっても」
「ご冗談を。ご主人様にいなくなられたら、梁州は崩壊します」
……それじゃあ、困るんだよ。
「……例えその素質がなくとも、一刀には人を率いることを覚えこませてくれ。多少、厳しくしてもいい。盗賊狩りでもして実践に慣れさせるように」
「それはかまいませぬが……ご主人様」
「?」
「何故、そこまで一刀殿を急いで鍛えるのですか? 時間をかければ、ご主人様ほどでなくとも……」
「……………………」
アイツが目覚めた以上、俺はもう……
「星も感じているだろう? この先の大陸の行く末を」
「………………」
「一人でも多くの人材がいる。梁州を守るためだ。第一軍からの武将候補の選別も、愛紗に急がせている。あまり時間が、ないんだよ……」
「…………ご主人様」
もう『物語』は、動いているのだから……
「頼むぞ。詠と連携して一刀を鍛えてくれ」
「……承知。ですが、ご主人様……」
「なんだ?」
「…………いえ。ご無理は、なさいませぬように……」
「……ありがとう」
―― 盾二 side 梁州回顧録より抜粋 ――
馬正が、死んだ。
俺を慕ってくれた人が死んだ。
俺のせいで……死んだ。
俺の目の前で……この世界で出来た、俺の兄が、父が、死んだ。
殺したのは唐周だ。
すぐに雛里の細作に捜索を命じた。
だが、この混乱でどこに逃げたかわからない。
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