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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十九話 盤面は掻き乱れたまま払暁を迎え
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さえすれば存分に蛮族の猛獣使いを蹂躙できるとも!」
 <帝国>軍は歴戦の軍組織にふさわしく、早々に混乱から立ち直ろうとしている。



同日 午前第四刻 南方戦域〈帝国〉軍防衛線より北方約十七里
集成第三軍先遣支隊 支隊本部 支隊長 馬堂豊久中佐


「――情報幕僚 全般状況は?」
 馬堂豊久は冷静な歴戦の支隊長の面を外さぬように注意しながら尋ねた。事前の予想の範疇ではあったが、ここにきて進軍速度が低下していた。
――日が昇るまで後僅かだ。こんな所で足止めをくうべきでは無いのだが・・・流石に哨兵が増えている。

「はい、支隊長殿――近衛の浸透突破集団は東進を続けており、既に第一旅団本部に強襲を行い、壊滅に成功しております。現在は海岸堡へ向かっているようです」

「指揮官は――あぁ〜、近衛衆兵の第五旅団長の――」
とそこで馬堂支隊長は眉を顰めると、大辺がそっと囁きかける。
「美倉准将閣下です」

「ん、ありがとう。その美倉閣下も今のところは上手く事を運んでいるようだな。
まぁ、わざわざ近衛総軍の主力銃兵まで投入しているのだから成功しないと恐ろしいことになるのだが――さてさて、我々はどうしたものかね?」
幕僚達も視線を交わす。現在、彼らの受けている指示は明確ではある。師団司令部を標的とし、行動を行うべきである。
「聯隊長殿、師団司令部の位置反応がつかめました!」
 捜索を行っていた戦闘導術士の一人が声を上げた。

「よくやった! 位置は?」

「司令部らしき反応の付近は現在地から北東に約一里弱です。
銃兵大隊と――騎兵らしき部隊が一個連隊、二千、総計で約三千程度が周囲に展開しております」
 ――合わせて此方とほぼ同数か。

「騎兵――昼の損害をもう補充したのか?」
 ――不味いな、日が昇る前にってのも厳しいが騎兵を相手にするとなると。丘陵を活用しないと損害が洒落にならない。

「いえ、もしかしたら本営直轄の部隊を出してきた可能性があります。
旅団本部を潰したことを既に把握しているとしたら――向こうも本腰を入れるでしょう」
 戦務幕僚の石井が言った。
「と、なるとあの姫様の事だ、子飼いの第三胸甲騎兵聯隊がでてきていると想定しよう
ならばおそらくは、カミンスキィ大佐が防衛指揮を執っているに違いない、出し惜しみをする筈がない。防衛に回った騎兵は弱いが・・・・・・あの男がそんな使い方する筈もないな」
 そこまで考えていると海岸方向から燭燐弾が打ち上げられたのが見えた。
「――あらやだ、あのイケメン野郎やる気まんまんじゃないですか――いっその事、帰るか?」
 冷や汗が流れるのを拭いながら八割本気の言葉が喉元で殺しきれず漏れでた。
「非常に魅力的ですがせめて陽動くらいはしましょう。」
応え
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