暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
アイングラッド編
SAO編
《圏内事件》3
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は外す。
ピックを逆手に持ち換えてシングルシュートのモーションをおこし、もう片方の手に放とうとしたとき、

「ちょ……ちょっと待ちなさいよ??」

鋭い声に動きを止めてアスナの方を見ると高価な治癒結晶を取り出していた。

「大袈裟だなあ。こんなんじゃ全体の1、2%しか減らないよ」
「バカ!!圏外じゃ何が起こるかわからないのよ!?さっさとパーティー組んでHPを見せなさい!!」

弟を叱る姉のような口調で怒鳴られ、飛んできたパーティー要請に首を縮めながら承諾する。

思い返せばアスナとパーティーを組んでいたのはアインクラッドの黎明期までで、最近ではボス攻略の方針を巡って対立し、言い争い、決闘にまで至ったこともある。
ちなみに、その争点だったフィールドボスは遅々として進まない会議にキレたレイがソロで倒してしまい、『紅き死神』の名前が広く知れ渡ったのは別の話だ。

そんな決して友好的な関係とは言えない彼女に心配された俺は面食らった顔をして、思わずアスナを凝視していた。



「……なにジロジロ見てんのよ」
「いや……そんなに心配してくれるとは思ってなくて……」
「ちっ……違うわよ!!……違わないけど……って早くしなさいよ!!」

ひぃっ、と縮み上がり、改めてピックを構える。
右手から放たれたピックは左手に刺さり、そのまま放置しておくと赤いライトエフェクトの《貫通継続ダメージ》が発生する。

「早く圏内に入って!!」

圏内に入ると時折赤いライトエフェクトは発生するものの、HPの減少は止まった。

「……止まった、わね」
「武器は刺さったまま。しかし継続ダメージは停止か……」
「感覚はどうだ?」
「残ってる。これは武器を刺したまま圏内をうろつくやつが出ないようにするためかな」
「今の君のことだけどね」
「よしキリト、もっかい圏外に出ろ。そして脳天に釘を刺してすぐに圏内に入れ。なかなか面白そうだ」
「やだよ!!」

冗談だと言って俺の左手に刺さってるピックをするっと抜いてくれる。

「しかし……だったらなぜカインズ氏は死んだんだ?圏内では必ずHPは保護されている……だが、死んだ。あの武器の特性か、未知のスキルか「うわっ!?」ん?」

叫び声は俺のもの
レイがピタッと止まりこちらを呆然と見ている。
その先には胸の前で俺の手をむぎゅーと握るアスナ。

「なっ……おまっ……な、何を!?」
「これダメージの残留感覚は消えたでしょ」
「―――うん、まあ……ありがとう」
「デレデレすんな」
「し、してない!!」
「声が上擦ってるぞ」
「う……」

10時にヨルコさんと待ち合わせをしているため俺達はそのまま居住区に向かった。



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