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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第一節 前兆 第五話
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ートを書かない方がいいでしょう。
 ログは消去しておきました。
 今後、しばらくは図書館に近づかないように。
 近いうちにまたメールします。
                                 貴女の味方より』

「どういうこと?!」
 メールが目の前で霞の如く消えたのだ。
 勢いよく立ちすぎて、椅子がドスンッと派手な音を立てて倒れた。下にも聞こえていただろう。
「消え……ちゃった……」
(え? これって、今日の昼間の図書館で書いていたレポートのこと?誰かにみられたってこと……? でも、ログを消したって……。それになんで、勝手にメールが消えちゃうの? 私の味方……ってどういうこと)
 ユィリイには判らないことだらけだった。
 だが、一つだけ判ることは、自分が書いた内容のレポートが誰かに見られたということ。それが、軍部の査閲に引っかかりそうだったのだろう。だが、誰かが、そうならないように未然に防いでくれた。
 でも、一体誰が?
 それに、私を助けてなんのメリットがあるの?
 頭の中が疑問でいっぱいになる。
 どうしよう。誰に相談すればいいのか、わからなかった。
(教授……話を聞いてくれるかしら……)
 だが、他に頼る術もなく、ユィリイは、ワイヤードでスタンフォーレ教授のアドレスを探した。教授の名前をクリックして、テキストメッセージを送る。教授が前にあまりムービーメールや携帯があまり好きじゃないと言っていたからだ。

『スタンフォーレ教授
 ファ・ユイリィです。
 お話したいことがあります。近いうちにお時間を作ってもらえますか?
 ご都合に合わせますので、できるだけ早めにお願いします。
            ファ・ユイリィ』

 送信ボタンをクリックする。
 ボイスメールやムービーメールに慣れているユイリィには、テキストメッセージは妙に堅苦しい気がした。それに、切迫感が伝わっただろうか。
 一刻も早く話をしたいと思ったが、そうそう返事が来るものではない。明日は教授の講義はなかったが、ゼミに行けば会えるかもしれないと気持ちを切り替えた。
――ポーン
 着信音が鳴る。
 丁度、教授はワイヤードに接続していたということだろうか。メールを開くと、明日の三時に大学の研究室に来る様にと書いてあった。
「明日か……」
 不意に携帯が鳴る。
 最近流行りのポップスである。呼び出し音として設定していたものだった。表示を確かめるとスタンフォーレ教授からである。
 慌てて電話をとった。
「もしもし?」
――スタンフォーレだ。今、いいかね?
「は、はい! きょ、教授!」
 落ち着いたバリトンが今のユイリィには心地よかった。上ずった自分の声が恥ずかしい。だが、そんなことを言っている場合ではない。
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