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【短編集】現実だってファンタジー
P.T.M
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して躱せないか?)
(駄目だな。それではやはり相手にぶつかるリスクを拭えない)
(右、左、下も駄目で後ろへは戻れず、更に止まることも出来ない。ならば・・・)
(残された選択肢は・・・)

奇しくも、女神は2人の若者に同じ選択肢しか用意して居なかった。正にそれは運命のいたずらとも言える悲劇か、若しくは喜劇。

((上しかない!!))

≪0,1秒経過≫

導き出した選択肢は全く同一にしてこの場を切り抜ける唯一の決定に相違なかった。ただし―――彼等の思考はなお加速する。

(上にどうする?相手の上を越えるか?)
(飛び越える・・・?いや、待てよ)
(向こうも同じ結論に達しているなら、「飛ぶ」か「飛ばせる」か・・・)
(そのどちらかを選択しなければいけない)

どちらかが飛べば片方が下を潜ることが出来る。だが両方が飛べば、当然ながら空中で衝突する羽目になる。それでは余りにも間抜けだ。イカロスの羽は太陽に近づきすぎて溶けたと言うが、これではそれ以前の問題だろう。どちらもが飛んでも、どちらもが飛ばなくとも待つのは敗北。ならば―――

(あの女は)
(あの男は)
((どっちを選ぶか、考えろ!))

≪0,17秒経過≫

顔を見る。ほんの一瞬の時間をハイスピードカメラのようなスローモーションで観測している彼は彼女を見る。彼女もまた蠅の羽ばたきすら数えられるほどの集中力で彼の瞳を見つめた。互いに互いの顔を見て、両者はほぼ同時にある推論を立てた。

思えば、方向転換の方法から今こうして視覚情報を得ようと必死になっている所まで、両者の行動は似通っている。ほぼ同一と言ってもいいほどにだ。つまり、彼/彼女もまた運命に逆らう一筋の矢である、可能性を芽吹かせようとする存在である可能性が高い。

―――すなわち、「私達」はその思考回路や行動に於いて似通っているという推論が立つ。
だが、それでは意味が無い。自分が悩んでいる間、相手も悩んでいるということ。ならば行動も同時に起こす可能性が高い。そうなれば矢張り、正面衝突は必至―――いや、待て。

(跳躍するのと姿勢を落として下を潜るのでは予備動作が変わってくる)
(姿勢を落とすのは体をさらに沈め、後は少し歩幅を調整すればいい)
(だが跳躍するのならばある程度脚に踏ん張りを利かせ・・・)
(尚且つガードレールの外に飛び出さない勢いである必要がある)
(ならば)
(恐らく)
((予備動作を先に起こさなければならないのは、跳躍する側!!))

≪0,2秒経過≫

ならばそこから逆算すれば、一定の距離を越えて尚互いが跳躍しなかった場合、その時点で両者の思惑は決壊する事が導き出される。ともすればどちらかが飛ばなければいけない計算になる。この計算に男は戦慄した。互いに思
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