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【短編集】現実だってファンタジー
高速道路最速奇譚! 前編
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飛んでいたのなら幽霊かもしれない。幽霊ならば自分は呪われるのかも、死の運命に囚われるのかも―――

「―――ッ!!気のせいよ気のせい!目の錯覚!!」

そう言い聞かせた彼女は車内に置いてあった眠気覚まし用のガムを手に取り、口に放り込んだ。舌の上を走る強烈な刺激と顎の感触が、一気に目を覚まさせる。

「・・・よしっ!」

ネガティブに物事を考えがちな彼女だが、今回は平常心をやはい段階で取り戻すことが出来た―――かに見えた。が、そんな彼女の平静を吹き飛ばす影が、バックミラーに映っていたのだ。はっきりと見えないがために余計に恐ろしく感じられるそれを彼女は―――不運にも、見てしまった。

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!?殺さないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!!」

それを見た瞬間、彼女は謎の論理飛躍を起こして謎の命乞いをしながら顔を伏せた。数秒して、前を見ずに運転すると本当に死ぬと思い直した彼女が顔を上げてそぉっとミラーに目をやると、先ほどの影は跡形もなく消えていた。

「あ、あれ?・・・・・・はぁ、見間違いかな・・・今度休暇でも取ろ・・・うぇ・・・?」

安心してバックミラーから目を離し前を見た彼女は、その影が単純に自分を追い越しただけで消えてなどいないことに気付き、もう一度布を裂くような悲鳴と耳を(つんざ)くクラクションを鳴らした。

影は、大江戸たちのすぐ後ろまで迫っていた・・・・・・
 
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