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【短編集】現実だってファンタジー
高速道路最速奇譚! 前編
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、息ひとつ乱さず並走している彼の名前は中村さん。彼も年上のメル友で、良き人生の先輩でもある。かごに鞄を入れて通勤するその姿はまさにサラリーマンだが実際には高校教師で、しかも莎良々ちゃんの学校勤務らしい。

ちらりとペダルを見ると最早残像の見える速度で回転するタービンと化しており、既に中村さんが常識人を逸脱した「逸般人」であることは明らか。にこやかな笑みを浮かべながらも凄まじい脚力と底無しの体力で時速約100キロを実現する鉄人である。でも体育教師ではないらしいけどね。嘘だと言ってよ中村さん、アンタ絶対に職業間違えてるよ。競輪に行って革命起こさない?

「そういえば大江戸さん。結局、例の上司さんとは上手くいきましたか?」
「ええ、お酒の席に引きずり出して言いたいこと全部伝えたら・・・分かってくれました」
「それは良かった。大人になるとアルコールがあって初めて言える事もありますからね。助言した側としても嬉しい限りです」
「こちらこそ、そこまで気にかけてもらえて恐縮っすよ」

感謝の意を示すと、気にしないで下さいとでも言うように微笑む中村さん。同じ笑顔に思えても、感情が確り伝わるのだからのこ人の笑顔は不思議だ。
中村さんはとにかく真摯で紳士だ。いつも絶やさない笑顔は勿論、相談事にはいつだって乗ってくれるし困った人を捨て置いたりもしない。そして教師で、高速道路チャリ通学。究極超人過ぎて頭が上がらないよホント。

と、前をとろとろ走っていた車がいたので各自散開して追い越す。こういう時にミサイルって羨ましいと思う。あれって座ってお尻痛くないのかって聞いたら、座る部分は電気を通すことで鉄からクッション並みの柔らかさまで調節可能な特殊素材使用らしい。流石天才は考えることが違う。
後ろから凄いクラクションが聞こえたが、追い越しくらいでそれほど騒ぐことか。しかも追いかけてこないし。きっとあれだ、寝ぼけて都市伝説(ターボばあちゃん)の派生伝説である「ボンネットババァ」でも見えたんだろう。冷静になれよ、車のボンネットに座ってるばあさんなんか高速道路で出る訳ないだろう。よほど情緒不安定で幻覚でも見たのかもしれない。


 = =


女性は恐怖に囚われていた。背後から突如、得体のしれない何かとともに車が一台現れ、自身の車を追い越して行ったのだ。得体のしれない何かは2つあり、一つは地に足をつけず空を飛んでいたような気がする。ともかく、どちらも高速道路で見える筈もない影だった。
彼女は昔から幽霊や都市伝説の話が怖くて苦手だった。今日とて、この周辺で都市伝説や幽霊の報告量が全国最多とも呼ばれる魔の道路など通りたくなかった。だが今日だけは渋滞の所為で迂回ルートを通れなかったのだ。

あれはなんだったのか。都市伝説に出る何かか、ひょっとして幽霊か。空を
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