高速道路最速奇譚! 前編
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―――そこの貴方」
「え?うわッ!?」
突如背後から掛けられた声に思わず男は大きくのけぞり、そのままバランスを崩して尻もちを―――つく前に助け起こされた。30代くらいのスーツを着た男だ。一見細身に見えて足腰がしっかりしているのか、あっさり引き起こされた。
「見た所、お怪我はないようですね・・・よかった」
「あ、ああ、あんたは・・・?」
「それよりも、早く道路脇に移動しましょう。高速道路では事故に遭って車から脱出した人が後続車両に跳ねられることもあります。まずはそうならないように脇に移動したほうがいい。警察に連絡は済ませてあるので直に助けが来ます」
「あ、ああ・・・」
柔らかい物腰で道路のわきのスペースまで言われるがままに誘導された。誘導する際もこちらの身体がいつふらついても支えられるように手を添えてあり、そこまで心配されてるのだろうかと言う考えが頭をよぎった。確かに車は派手に壊れているように見えるから、向こうが心配するのも無理はない。逆にちょっと腰が痛い以外に異常のないこちらが申し訳なくなる気分だった。
誘導を終えた男性は会釈をする。とても誠実な人なのだな、と感じた。
「すみません。出来ればもう少し手助けをしたいのですが、私にも仕事があるのでこれで御暇させてもらいます」
「え、ああ・・・いや、こっちこそ手間を掛けさせてすまんな」
むしろ間抜けにも事故を起こした自分の安否を気遣い、通報まで済ませてくれたのならこちらが感謝して然るべきだろう。男はスーツの男性にぎこちないながら笑顔を作ってその誠意に応えた。
「では・・・事故にお気をつけて」
「ああ、アンタもな!」
そして、親切なスーツの男性は道路脇に止めてあった二輪の車両に跨り・・・二輪の―――
「・・・・・・へ?」
男性はもう一度、自分の見た光景が信じられなくなった。夢を見ているのではと頬を抓ってみたが、目は醒めたままだった。
= =
ふとバックミラーを覗くと、新たな車影が映っていた。乗用車にしては随分小さく、まるで人がそのまま高速道路を走っているようだ。それが見覚えのある人物ということを確認できた頃には莎良々ちゃんがを発見して手を振っていた。2人目の通勤仲間登場だ。
「あ!中村センセーだ!中村センセ〜!!」
「おはようございます、大江戸さんに星川さん。それにスカッドちゃんもね」
「おはざーっす!」
『(*・ω・*)∩』
現れたるは、この高速道路をママチャリで爆走するスーツ姿の男性。言うまでもなく時速100キロ前後の速度で迫っていて、それは決してバイクや原付でもなければ電動自転車でもない。聞こえる音もキコキコとかシャコシャコという段階を越えて扇風機みたいな音がする。
あっという間に俺達に追いつき
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