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幸せの色
第二章
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「はあ」
「そういうことなのよ」
「どちらも」
「そう、そして青や黄色の他にもね、幸せの色はあるのよ」
「そうなんですか」
 二人はそれを聞いて首を傾げさせた。どうにも話がわからないのだ。
 だが先生はそんな二人に対してまだ笑ったままだった。穏やかな笑みを向け続ける。
「考えてみるといいわ」
「けれど何が」
「考えてみるだけでなくて探してみるのもいいわよ」
「探すのですか?」
「きっと側にあるわよ。すぐ側にね」
「ううん」
 達也にも諒子にも先生の話の意味が全くわからなかった。そんなことが有り得るのかとさえ思えるのだ。達也にとっては青、諒子にとっては黄色が幸せの色、そう思ってずっと描いてきたからだ。それが変わるのか。とてもそうは思えない。先生の話はまさに狐につままれたような話であった。
「描くなとは言わないから」10
 先生はこう言い加えた。
「描きながら考えてみたら?」
「はあ」
「じゃあそうさせてもらいますね」
「できたら先生に見せて」
 穏やかな笑みは変わらない。
「楽しみにしてるからね」
「わかりました」
 二人は答えた。それからまた描いて描いて描いてであった。けれど達也の色は青いままで諒子の色は黄色いままだった。それが変わることはなかった。
 二人にはどうしてもわからない。幸せの色は一つしかないとしか思えなかったのだ。達也も諒子も。どれだけ考えても悩んでも結論はそれである。それでも考え続けて描き続けているが。結論は変わりそうにもなかった。
「井出さん」
 考えながら描き続ける中達也は諒子に声をかけた。学校の帰り道であった。


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