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幸せの色
第一章
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第一章

                    幸せの色
「青い絵ってやっぱりいいよね」
 この高校の美術部の一年中野達也は今日も部室で青い絵を描いていた。
「空の青も。海の青もさ」
 その絵を描きながらにこやかに笑っていた。
「描いていて楽しいよ。やっぱり青がいいね」
「本当に青が好きなのね」
 それを聞いた一人の少女が彼に声をかけてきた。彼と同じ美術部の一年井出諒子だ。
「いつも描いていて」
「そうだね、青だったら何でもいいんだ」
 達也はそれに応えて言う。
「青い絵を描けるんだったら」
「どうしてそんなに青が好きなの?」
 諒子は問う。
「よかったら教えて」
「それは幸せの色だからだよ」
 達也の答えはこうであった。
「幸せの色?」
「うん」
 にこりと笑って頷く。
「ほら、青い鳥がそうじゃない」
「ええ」
 メーテルリンクの童話である。あれの青い鳥のことであるのは諒子も知っていた。
「あの鳥は幸せの色だったじゃないか。青は幸せの色なんだよ」
「そうなの」
「僕にとってはね。だから青い色を描くんだよ」
 それが達也の主張であった。
「今もこれからもね」
「ふうん」
 諒子はそれを聞いていた。聞いているうちにふと思った。
「それじゃあ」
「何だい?」
 顔は絵に向けている。声だけで諒子に応えた。
「私が幸せの色を描いてもいいのよね」
「僕は別に止めないよ」
 それに対する達也の返事は素っ気なかった。
「だって僕のこれは僕の幸せの色だから。他の誰が描こうと構わないさ」
「そうなの。じゃあ描くわ」
「どうぞ。それで君も青い絵を描くの?」
「ううん」
 だがそれには首を横に振った。達也は見ていなかったがその顔はにこりと笑ったものであった。
「私の色は違うから」
 諒子は言った。
「別の色を使うわ。貴方とは違う色をね」
「じゃあそうしたらいいよ。けれど何の色なの?」
「それは後でわかるわ」
「後で」
「だから待ってえ。すぐに描くから」
「うん」
 達也は相変わらず青い絵を描き続けていた。諒子はその横で絵の具と筆を手に取った。そして彼女もキャンバスに絵を描きはじめたのであった。それは同じ幸せをイメージして描いていても達也のそれとは全く違う絵になろうとしていたのであった。
 数日後達也の絵は出来上がった。それは海の絵だった。
「また青い海ね」
 諒子はその海の絵を見てまずはこう言った。
「奇麗な青い海」
「夏休みに見た海なんだ」
 達也は自分の絵を見て目を細めていた。細めながら応えていた。
「それを描いたんだけれどどうかな」
「中々いいと思うわ」
 見れば諒子も目を細めていた。彼女もその絵から幸せを感じているようであった。
「広くてそれでいて
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