第二章
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第二章
「まずはそのお姿ですが」
「私の姿・・・・・・」
「そうです。そのお顔は紛れもなく人のものです」
ダイダロスがまず言うのはこのことだった。
「そのお顔は」
「そうなのか?」
「水を御覧になられたことはありますね」
「うむ」8
この問いには答えること、頷くことができた。この問いには。
「それは。ある」
「その時に御覧になられた筈です。水に映るものを」
「むっ!?それではだ」
これでわかったのだった。それが何かを。彼は決して愚かではなかった。
「それが私の」
「そうです。お姿です」
ダイダロスもこのことを彼に告げた。その通りであると。
「それこそが貴方様の」
「ではその方と同じなのだな」
このことをあらためて確認するのだった。
「私は」
「貴方は人間です」
まるで心に刻み付けるような言葉だった。彼に対して。
「化け物ではありません」
「そうか。私は人間なのだな」
「そうです」
「では何故だ?」
自分が人間である、そのことを確かめたうえでダイダロスに対してさらに問うのであった。
「何故なのだ?」
「何故といいますと」
「私はここにいるのだ」
問うたのはこのことだった。
「何故ここに。私はいるのだ」
「ここにですか」
「そうだ。何故だ?」
またこのことを問う。
「ここにいるのだ。いなければならないのだ?」
「それは貴方がいてはならないことになっているからです」
「私がか」
「その通りです。陛下にとっては」
「陛下。というと」
このこともまた彼にはわかった。やはり書の世界だけでのことであるが。
「王だな」
「そうです」
「王。この国の王」
彼は言った。己が知っている中で。
「その王が私をここに閉じ込めているのか」
「その通りでございます。何故なら」
「何故なら?」
「貴方は陛下の御子息だからです」
こう彼に教えるダイダロスであった。
「貴方が。陛下の御子息だからなのです」
「私が。王の息子だからか」
「左様です」
また彼に教えるダイダロスだった。
「王の御子息だからです」
「それはわからない」
彼はダイダロスの話を聞いていぶかしみ深く考える顔になって述べた。
「何故だ?それは何故なのだ?」
ダイダロスに対して問う。半分は自分にも問うている。そうした言葉である。
「私は王の息子なのだな」
「はい」
「ならば。何故だ」
また半分はダイダロスに、もう半分は自分自身に対しての問いであった。
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