入り混じるは想いか欲か
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損害を徐々に増やしつつある。
孫呉の最精鋭である為に、どうにか戦えている程度。
伝令は既に飛ばしている。冥琳ならば戦場の違和感を察知して、直ぐに来てくれるだろうと信じて戦い続けた。
戦闘が始まって三刻ほどで、漸く到着した第二の部隊はやはり冥琳のモノ。
ほっと一息。
しかし、そこで袁術軍から一つの部隊が無理矢理突撃を仕掛けてきた。
「裏切りモノの孫策! 我らが主を殺さんとする不忠モノよ! 何が大徳かっ! 貴様には死すら生温い! この地にて果て、地獄に落ちて殺したモノ達から責苦を受けろ!」
大きな怒声は、たちまち袁術軍の兵達を奮い立たせた。
利九の存在は兵達にとってそれほど大きかった。だから……全ての兵がなんの為に戦っているのかを明確に理解していく。
敵は悪。大徳とは全く違う裏切り者。我らは正しい。我らこそが正義、と。
心力は、意思は、想いは……皆を戦士へと駆り立てて行く。
雪蓮は向かい来る敵を切り捨てながら、内心で舌打ちを一つ。
――こうなるから紀霊だけは討ち取っておいてほしかったんだけど……やっぱりあの子達には荷が重かったか。でも……小蓮を助け出してくれて、ありがとう。
紀霊が此処に、戦闘の形跡のある部隊を引き連れて逃げてきたという事は、無事に助け出されたという証に他ならない。
戦場であるが故に、安堵と歓喜を抑えつけて、すうっと大きく息を吸った雪蓮は、戦場の最中で高らかに声を上げた。
「悪辣なる袁家が何を言うか! 貴様らは民を虐げ、我欲から他の地を奪わんと攻め込む大罪人ではないか! 我らは待っていたぞ! 貴様らにこの手で引導を渡せるこの時をな! 悪逆の袁家、死すべし!」
孫呉の兵の士気はそれだけで跳ね上がる。
言われるまでも無く、皆が願っていた事なのだ。
自身の主こそが彼の地を治めるに相応しい。平穏な地を作り出してくれるのだ、と。
そのまま、利九の部隊と雪蓮の部隊は激突する。
互いに将はまだ動かず、用兵では互角の動きを見せていた。
雪蓮の目から見ても、紀霊隊は異常だった。
孫呉の精兵はまさしく死力を尽くして戦っている。練度では言うまでも無くこちらの方が上の筈。だというのに、拮抗したままで戦場が動かない。
見ると、敵兵一人一人の目には明るい光が無い。生きようという意思が欠片も感じられず、昏い暗い怨嗟の炎がただ轟々と燃えている。
――あれは……死兵か。紀霊はこの戦場で死ぬつもりなのね。
疾く、読み取った雪蓮は後ろを向いた。
冥琳の部隊は直ぐに合流出来るほどに敵を押し込んできていた。
敵は誇り無き袁家。紀霊と一騎打ちをしようにも、何処で邪魔をされるか分かったモノでは無い。
ただ、臆病者とだけは言われてはならない。それだけは、先頭に
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