入り混じるは想いか欲か
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な」
「終わった事を言っても仕方がない。さらに厳しくなったと見ていい。こっちも情報制限は掛けてるから行動を起こされるのはまだだとしても……アレは切り捨ててしまうのが上策」
七乃は背筋に冷や汗が流れる。
利九が甘さを捨てられていないのは虎牢関で確認済みではあったのだが、美羽が追い詰められてもそれが出るとは思っても見なかった。
原因は何かと考えれば、自分が内密に送った手紙。迷いを生ませたのは七乃であった。
この戦の最中で、美羽が小蓮の事を楽しそうに話していた事を知った明が七乃に問い詰め、手紙を送った後に懐柔策の事はバレていた。
評価はされたが、黙っていたことが問題である。七乃はそれのせいで強く出られず、夕の良心だけに美羽の今後を任せるしかない。
夕は『アレ』と言い切った。
もはや使えない駒でしかないのだ。これまで長く、美羽の為に尽くしてきた利九が。同志として認め、互いに袁家を内部から強引に変えてやろうとしていたモノが、まるで興味の無くなったおもちゃのよう。
明はなんでもない事のようにその会話を聞いていた。彼女にとっても、失敗した同志は、もはや出来る限り有用に使って切り捨てるだけの存在に落ちてしまった。
ほんの少しだけ、七乃の心に痛みが走る。
――これはまだ私が人である証、ですか。郭図さんは自尊心と我欲が強いので、醜くて人間らしいと理解できますけど……やっぱりあの二人は怖いですねぇ。
冷徹な光を宿した瞳は三者三様ではあったが、欲の渦巻く郭図の瞳はまだ人間らしい。しかし二人は……我欲と呼ぶにはあまりに昏く渦巻き過ぎていた。
「最重要なもんを失敗した駒の使い方は?」
「……まず七乃に決めて貰う。こっちに来るか、それとも丸ごと死ぬか」
凍りつくような声。それがどういう事か、七乃は瞬時に理解する。
何を助けたい? そう問いかけているのだ。
人の心か、自分の命か、それとも……やはり大切なモノの命か。
夕の瞳を覗き込み、ゴクリと生唾を呑み込んだ七乃は、震えながらもどうにか思考を回していく。
幾多も浮かび上がる展開、数え切れない程の情報、そして……美羽と過ごしてきた数々の思い出。
その中で……たった一つだけ、光の見える道を見つけ、
――私は……美羽様だけが幸せに暮らせたらそれでいい。
にこにこと笑顔を浮かべ始めた。
郭図はその姿に戦慄を覚える。この女も、張コウと同じく、やはり自分がどうでもいい異常者の類なのだ、と。外道ではあっても、郭図は自分が大切な、普通の人としての感覚を残していた。
「そうですねぇ♪ じゃあ利九ちゃんの気性から、きっと此処に向かってくると思いますから、こんなのはどうでしょうかぁ?」
そのまま、つらつらと説明された話を聞いて、三人共がにや
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