入り混じるは想いか欲か
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伝令を送っておけ。
皆のモノ、よく聞け! 敵のバカが二人になった! 二人とも討ち取れば曹操軍も悔しがるじゃろう!」
振り向いて言い放った祭は、兵達から湧き上がる声を聞いてうんうんと頷き、北上を始めた。
自身の主と、信頼の置く軍師が直ぐに来るのだと信じて。
祭がその場に到着したのは半日後、八つ時に差し掛かったあたりであった。
曹操軍は袁紹軍本隊の情報が入っていたのか、既に先遣隊として春蘭、霞、稟の率いる三万強が到着していた。
共に軍を進めること幾分、袁紹軍の増援と共に敵が構えていた戦場は……余りに異質だった。
「お〜っほっほっほっ! お〜っほっほっほっ!」
遠いはずであるのに聞こえる高笑いは大地からでは無く宙から。金ぴかの鎧が日光を反射してぎらぎらと眩しく、誰もが、不快感をあらわにげんなりしていた。
見えたのは大きな、仰々しい金色で塗られた筵を張られた櫓。十を越える数が居並び、攻め入るには、高い最上部からどれだけ矢を射掛けられるか分からない。
「儂らが着くまでにあれだけの櫓を建てたというのか……」
「き、昨日の報告では何も無かったはずなんですよ〜。夜にも異常な音はなかったって言ってたんですが……」
穏の言葉を聞いて、再度敵軍に目を向けても、何も変わらない。
何よりも不思議なのはふって湧いたように現れた事であった。
「妖術使いでもおるのか、向こうには」
心底不快な様子で祭が言うと、
「分かりません。なにぶん、優秀な情報収集役が皆、建業に行ってしまっているので……。それよりも、敵は逃走経路の確保が出来ていると思うので、回り込むにも時間が足りませんし、攻めないとタダで逃がしちゃう事になってしまいます。紀霊隊二万と我らの本隊もぶつかっていますから……曹操軍と協力するしかなさそうです」
穏は泣きそうな顔で現状で取らざるを得ない選択を並べて行った。
「しかし奴等は動かんじゃろ。あの櫓の数では迂闊に近寄れんぞ。逃走が敵の狙いなら軍議を開いている時間も惜しいが……」
「いえ、曹操軍は動かざるを得ません。残りの袁術軍の兵数がそっくりそのまま袁紹軍に吸収されると、この後の戦が厳しくなるのは明白です。私達と協力して袁紹軍の数を減らしたいからこそ、密盟を申し出てきたはずですから、必ず協力してくれるでしょう」
「……なるほどのぅ。なら、どちらが先に出るか、というわけか」
にやりと、祭は笑った。
獰猛な肉食獣のようなその笑みに、穏は背筋に冷たいモノが走る。
「まさか……先に行くんですか?」
「当然じゃ。ひよっこ共にああいうモノ相手の戦の仕方を見せて、儂らには通じん事を教えてやる。それに向こうには夏侯淵がおらん。あれだけの櫓に対処出来る弓使い
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