第五章
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第五章
「目が優しいし顔だって」
「顔も!?」
「それは嘘じゃないの?」
「ううん、嘘じゃないの」
けれど男の子は両親の言葉に笑ってその首を横に振るのだった。
「顔つきがそうじゃない。牙も剥いてないし穏やかだし」
「そうなの?」
「そんな。ゴリラが」
「いえ、本当ですよ」
「この子の言う通りですよ」
しかしここで二人が両親に対して話すのだった。
「ですからゴリラはどの動物も殺しませんし」
「暴力を振ることもありません」
「けれど両手で胸を叩いて」
「あんなに威嚇して」
ゴリラといえば誰でも知っている話である。ゴリラはこうして相手を威嚇するのである。確かにゴリラの姿と大きさからこれをされるとかなりの威圧感がある。
「あれで凶暴じゃないんですか?」
「糞も投げますよね」
「ですからそれだけですよ」
「そういったこと以外何もしませんよ」
彼等はそのことを言われても落ち着いたものだった。
「本当にね」
「威嚇して糞を投げるだけですから」
「そうだったんですか」
「それだけですか」
「はい、それだけです」
「それだけしかできないんですよ、ゴリラは」
二人はまた両親と周りに話すのだった。
「本当にそれだけですから」
「ゴリラは。優しくて大人しいんですよ」
「そうだよね。だから僕ゴリラ大好きだよ」
男の子がここでまた言ってきた。
「優しいから」
「それに頭もいいんです」
「この子をちゃんと手に取って助けましたよね」
また話す二人だった。
「力を加減して。そうして」
「御覧になられましたよね」
「はい。今確かに」
「それは」
両親だけでなく他の人達もその言葉に頷いたのだった。
「じゃあゴリラは本当に」
「大人しくて優しいんですね」
「外見じゃ全くわからないですけれどね」
淳が微笑んで皆に話した。
「けれど実際はそうなんですよ。ゴリラは大人しくて優しいんですよ」
「それが本当だったんですね」
「ゴリラは優しい動物だったんですね」
「そして賢い動物です」
今度言ったのは剛史だった。
「ああして力加減もしてくれますし」
「ひょっとしたらチンパンジーとかよりも」
「賢いのかな」
「そうした説もあります」
また言う剛史だった。
「ですから。ゴリラを怖がる必要はあいません」
「そうなんだよ。だから僕大好きだよ」
男の子の言葉はここでも出された。
「ゴリラね。これからも大好きでいるよ」
「有り難う」
「坊や、感謝するよ」
淳も剛史も男の子の言葉に微笑んだ。
「わかってくれて」
「ゴリラのことを」
「僕、大人になったらね」
男の子は微笑み続けたまま言う。
「絶対にゴリラの飼育係になるよ」
「そうなの。ゴリラの」
「今のお
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