第四章
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第四章
「子供が舎の中に落ちたんですか」
「それで怪我は」
「幸いそれはありませんでした」
「怪我は」
両親が二人の前に来て言うのだった。
「けれどこのままじゃ」
「ゴリラに」
「はい、わかっています」
「ですが安心して下さい」
二人はこう両親に告げた。
「我々がすぐに向かいますので」
「ですから」
「頼みますよ、ゴリラですから」
「何かあったら本当に」
この両親はゴリラに対する偏見をあからさまに見せていた。周りもだ。二人はそんな彼等を見て内心非常に辛くいたたまれなかった。
(どうしてなんだ、何故なんだ)
(ゴリラは本当は物凄く賢くて優しいのに)
そう思ってはいても言い出すことはできない。それが余計に辛かった。
そしてその間にも周囲が慌てた声を出す。
(おい、来たぞ!」
「食われるぞ!」
「おい、早く何とかしてくれ!」
皆焦りを露わにして二人に言ってきた。
「このままじゃあの子供が」
「食い殺されるじゃないか!」
(ゴリラは野菜や果物しか食べないのに)
(肉なんか食うものか)
二人はそれはよくわかっていた。
(それでどうしてここまで言われるんだ)
(どうしてなんだ、顔が悪いだけで)
「とにかく。安心して下さい」
「僕達が今行きます」
彼等はそれでも言うのだった。表面上は落ち着いた顔で。
そうしてすぐにロープを出して淳がそれを身体にくくりつける。そうしてそのうえでゴリラの舎に入って行く。剛史は外に残りそのうえでロープを握っていた。
二人はすぐに男の子を助けようとする。しかしその男の子の側にゴリラ達が近付き。それを見た観客達がまた叫ぶのだった。
「おい、来たぞ!」
「もう駄目だ!」
「あなた、大輔が!」
「食われる!」
両親もまた叫ぶ。最早駄目だと思われた。しかしここでゴリラ達は。
何と男の子を優しくその手に抱いた。そうして彼を優しく抱いたまま舎の中に降りてきていた淳のところに来て。そうして彼に子供を渡したのだった。
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
皆それを見て驚きの声をあげるのだった。
「ゴリラが子供を!?」
「子供を助けたなんて」
「しかも飼育係の人に手渡すなんて」
「悪いな、ゴロ」
しかし淳はにこりと笑ってそのゴリラの名前を呼んで子供を受け取るのだった。
「手伝ってくれたんだな」
「手伝った!?」
「ゴリラが?」
「そうです」
剛史はここで驚く周りに対して告げた。
「御覧になられた通りですよ。ゴリラが子供を助けたんですよ」
「嘘だろ?ゴリラがそんな」
「子供を助けるなんて」
「いえ、その通りですよ」
だが剛史は驚く彼等に対してまた言うのだった。穏やかな声で。
「ゴリラは人を襲わないですよ」
「そうだっ
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